特集ページ【あなたの知らない裏の顔——奥深き裏面の世界】

記念メダルの裏面
茶平工業訪問時にいただいた、インクジェットプリント用のメダルの裏面。プリンタで図柄を印刷するところを実演していただくために使用され、おもて面だけ印刷した後そのままプレゼントされた。「両面ともプリント印刷のみ」というメダルは今の所見たことがないのだが、その元となるためのメダルは用意されているみたい。

 固定観念——が、人間の発想の邪魔をする。「こういうものだ」と思い込むことは、凡庸の始まりである。

 茶平工業製記念メダルにおいて、裏面の「刻印面」はアイデンティティであるといえる。それがあるからこそ茶平メダルであるといえるし、なければ「茶平なの? どうなの?」と確認作業に追われることとなる。記念メダラーの中には「刻印面があるメダルのみ収集する」と割り切っている方もおられるのではないだろうか。たとえ刻印しなくても、刻印面が欲しいと不思議な想いまで抱くようになる茶平工業製メダルを愛する記念メダラー達。記念メダルと聞けばすぐに裏面を確認したくなるあなたは、すでに重度の中毒者である。

 私は茶平工業製の記念メダルで円形であればほぼどのようなメダルであろうと収集することにしている。しかしながら、やはり「刻印面」があるメダルが一番好きである。この刻印面が、目の前にあるメダルを特別な存在へと昇華する。

 極論を言えば、ある意味では記念メダラー達は裏面を最も愛しているともいえる。デザインの評価は無論おもて面を見てするのだが、そこには裏面=刻印面という土台がある。その土台あってのおもて面デザインであり、土台がない場合、デザインの良し悪し云々まで話題が回らないのである。上がるのは「茶平工業製なのかどうか」ばかりである。

 そんな茶平のアイデンティティが息づく裏面にも、実はなかなか挑戦的なデザインのものがある。この【特集ページ】では、そんな茶平メダルの異端児たちを紹介したい。ここで重要なのは「刻印を可能としながらも、他とは違う裏面」であることである。刻印が不可な仕様であれば、それはまた別カテゴリーということになる。

 私がオリジナルメダルを製作をした際の最も大きな心残りの一つに、「裏面をもっと凝れば良かった!」というのがある。人生で一度限りのことかもしれないチャンスに巡り合った時、チャレンジスピリッツを発揮できるかどうか——発揮できなかったその時、後悔の二文字はこういうときに生まれ出づるのかもしれない。

 メダルを茶平工業へ発注した販売会社のデザイナー達が、自身の才能を余すことなく込めた渾身の裏面をズラッと並べてみた(専務がデザインしたものもあると思いますが)。奥深き裏面の世界をぜひご堪能いただきたい。私が愛する「茶平工業製記念メダルの裏面」の世界、ここで紹介した物以外のメダルがあれば、ぜひご一報を。

(以下、メダルの画像クリックで該当記事へリンクします)

特殊裏面日本代表【東京都庁】

 通常と違う裏面で真っ先に思い浮かぶのは【東京都庁】である。初めてこのメダルを手にした時、「こういうのもありなんだ〜」と呑気に思ったことを覚えている。当時は金型のこととか製造工程のこと等にまでまったく思いが巡らなかったので、「こんなものもあるんだな」くらいにしか思わなかった。しかし今では、この裏面を採用したその勇気、そして他でもない「東京」を見事に表現したそのデザイン(桜)に改めて脱帽である。「これがプロのデザイナーの仕事なんだな〜」と必要以上に慄いてしまう次第である。【東京都庁】はオークコーポレーション系のメダルスポットなので、やはりデザインが良い!

いつの時代も群を抜いた裏面デザインの魔都・東京

都庁に並ぶ特殊裏面ツートップ【浅草花やしき】

 【東京都庁】に並んで特殊裏面として知られる【花やしき】。【花やしき】だから、お花の形である。こちらもとてもよくその施設のことを表現した素敵な裏面であるといえる。花やしきは『こち亀』にも何度か登場する、その古さを逆にウリにしている遊園地である。乗り物が壊れないか不安で怖いという逆転の発想の絶叫系である。

↓所長の息子を【花やしき】へ連れて行く話が収録された巻

お台場一のデザイン製! フジテレビが超えられない壁……【台場一丁目商店街】

 お台場は【フジテレビ】のおかげで記念メダルラッシュである。初めて訪れて、かつ、全てのメダルを購入しようとするならば、1万円では足りないくらいの費用がかかること必至だ。しかも【フジテレビ】はメダルの入れ替わりが激しく、何度も何度も何度も何度も何度も訪れなければならない(何らかの恨みが込められた文章)。

 そんな中で一際目を引くデザインなのが【台場一丁目商店街】のメダルである。ここはオークコーポレーション系のメダルなので、記念メダルのことがよくわかっているデザインであるといえる。裏面の注目ポイントは、一見なんの変哲もないデザインに見えるのだが、「台場一丁目商店街」のロゴが○から少しはみ出ている点である。この「本来なら○の中に収めるところだけど、遊び心でちょっとはみだしちゃお〜」的な上級者の遊び心が垣間見える一枚である。

 【フジテレビ】のメダルのデザインはどんなに大量にリリースしても凡庸なものがほとんどなので、記念メダルという特殊な観測観点でいえば、【台場一丁目商店街】は【フジテレビ】の正面に鎮座する超えられない壁となっている。そんな観点で見ているものは日本にごくわずかであることは間違い無いが。

記念メダル販売の在り方を変えた【宝塚歌劇@スカイツリー】

 【宝塚歌劇@スカイツリー】はスカイツリー展望回廊で開催されたイベントである。このイベントの記念メダルは5種類販売されたのだが、「金型は同一にして、プリントの柄を変える」という新しい試みで種類を増やしたのが特徴的であった。記念メダル製作においてもっとも費用が掛かるのが金型製作である。従来であれば「メダルの種類を増やす」=「種類の分だけ金型を製作する」となり費用がかなりかさんだのだが、全然違うデザインのメダルを一つの金型で実現するという今までになかった発想で売り上げを伸ばしたメダルであった(全面プリントタイプならこれ以前にもあったかもしれないが)。オークコーポレーション系のメダルなので、秀逸なのはやはり金型のデザインである。プリントメダルであるとはいえ、土台となる金型のデザインも他とは一線を画すオシャレさで、「宝塚歌劇」という存在をそのデザインからとてもよく表現しているといえる。裏面のひらひらふりふりスカートを想起させるような華のあるデザインも「なんとなく宝塚っぽい!」と納得させる魅力を放っている。

記念メダルを「アクセサリー」に昇華した【シアタープロダクツ】

 表参道に軒を連ねるアパレルショップでも記念メダルが販売されたことがある。しかし記念メダルと名乗ったわけではなく、「キーホルダー」「ペンダント」として——つまりおしゃれブランドの「アクセサリー」として記念メダルを販売したのが【シアタープロダクツ】である。正直「記念メダルをペンダントにして身につける人ってほんとにいるの?」と思っていたのだが(正直すぎる意見)、記念メダルについて何も知らない、かつ、このブランドのファンの方は、オシャレなファッションに身を包んで身につけていた可能性があるわけである。出会ってみたい! いやマジで!

記念メダル日本代表【東京タワー55th】

東京タワー55th記念メダル

 【東京タワー】は、【スカイツリー】が誕生するまでは、間違いなく記念メダル界における日本代表であった。日本代表ということは、イコール世界代表ということになる(根拠のない断言)。最近ではその座を【スカイツリー】に奪われつつあるものの、なんのなんの、新作メダル(しかもデザインが良い)をリリースし続け、ついには禁断の純銀メダルにまで手を出してしまった。たとえタワーの高さでは大きく遅れをとろうと、メダル人気の高さでは決して【スカイツリー】に引けを取らない元祖記念メダル定番スポットである。

 そんな【東京タワー】誕生55周年を記念して製作された記念メダルは、実はカラーが4種類あり、これは60thと同じ手法である。しかしながら裏面をこのように凝ったデザインにしたのは55thのみである。周年記念ごとにオリジナルの金型を製作するのはコストの面で厳しいのかもしれないが、せめて「○○th」の箇所のみ修正するような方法で使い回していただければ良かったのに〜と人の財布だからこそ出せる不満を述べるダメな顧客の典型(金型の一部修正のみは割安で可能なはず。おいくら万円かは不明であるが)。

それとない凝り様でイベントを主張する【大英自然史博物館展】

 【国立科学博物館】で開催される「特別展」系の記念メダルである。特別展は定期的に開催され、記念メダルもその特別展オリジナルのものがよく発売される。東京近郊に住んでいた方が記念メダル収集には有利なポイントの一つである。

 【大英自然史博物館展】では始祖鳥の化石の展示がされたのが目玉の一つで、おもて面の図柄にもなっている。このデザインが秀逸である。化石を記念メダル上で再現するという発想自体が、デザイナーの記念メダルのデザイン経験が豊富なことを物語っている。肝心の裏面も「TREASURES」という前面に押し出した言葉と見事に調和するデザインで、「すべてに無駄がない」というのがプロの仕事なのだなぁと感心しきりな次第である。

かつては「フェリーといえば記念メダル」であった時代の象徴【ダイヤモンドフェリー】

ダイヤモンドフェリー 記念メダル

 古いメダルを収集していると、多くの「フェリーメダル」と遭遇することになる。かつては「フェリーといえば記念メダル」だったんだなぁと思うとともに、フェリーでの旅が現在より一般的だったという歴史を感じる次第である。現在では沖縄以外は新幹線で行ける時代になり、格安航空も数多生まれ、フェリーの旅を敢えて選ぶ理由は「安いから」と「車・バイクを運びたいから」のどちらかである場合が多い。

 私は船旅特有のあのワクワク感は大好きである。が、それも記念メダルが船内にあってのものなので、真にフェリー好きの方達からしたら、邪道であることは間違いない。

古き良き裏面を復刻した【明治村】

 かなり有名なメダルである。こちらのメダルに関しては記念メダル界における聖書『旅愁マスク 観光系』を著したほりのぶゆき先生にご解説いただく。

『旅愁マスク 観光系』より

 余談となるが、左下の※にある「70年代くらいからの在庫がいまだに売られている所もある」というのは、例えば京都の天橋立そばにある【知恩寺】などのことで、いまだに存在する。最近では超ホットな話題となった【日光戦場ヶ原】とかですかね。

大変化球でありながらアイデンティティを失わない衝撃のデザイン【特別展 昆虫】

 私が「裏面特集を書こう!」と思ったきっかけは、この【特別展 昆虫】のメダルと出会ったことである。いやー、この裏面には衝撃を受けた。オークコーポレーションのデザイナーに「ついにこの境地までに達したのか……( ゚д゚)スエオソロシイ」と恐れにも似た畏怖を抱いた一枚である。また、今までにない奇抜なデザインながらも、デザイナーの方が「刻印面」という概念を非常に大切にしていることがよくわかる一枚でもある。極論をいえば、昆虫の足跡で描かれた円は、別に無くても刻印する上では特に問題がない。しかし敢えて裏面に「円」を描き、「刻印面」というスペースを設けたことが、茶平メダルを茶平メダルたるものにしているいえる。裏面に「刻印面」を設けることは、刻印できるかどうかとは別の次元で、とても重要な茶平メダルのアイデンティティなのである。そしてもちろん、この「円」を昆虫の足跡で描くという発想が非凡すぎてもはや言葉が出ない。私にもこんな発想があればなぁ〜

むしろ刻印してみたい……が勇気がでない【芳春院特別観覧】

 このイベントは実はよくわかっていないのだが、大河ドラマ『利家とまつ』が放送されていた頃に二人のゆかりの地である【芳春院】で催されたものと思われる。このメダルに刻印を施したものは見たことがないので、恐らく刻印機は設置されなかったのではないかと予想しているのだが、もちろん真相はわからない。なかなか挑戦的な裏面デザインであるので、ここまでくると賛否(収集するかしないか)が分かれるところであろうし、何より「そもそも茶平工業製なのか?」と判断に迷うレベルとなる(ケースに「CHAHEI」の文字があるので茶平工業製であることは間違いがない)。やはり「刻印面」という概念が記念メダラーにとってとても重要な要素であることを教えてくれる一枚である。「おまえじゃなきゃダメなんだ!」である(何が?)。

何のイベントかをその形で語る【第50回選抜高校野球】

 かなり古いメダルとなるが、この頃から挑戦的な裏面が存在したことに感動なのである。実は似たようなコンセプトの裏面はこれ以前にも存在する。

比較参考:第54回夏の甲子園

 しかし最大の違いは、言うまでも無く「円」の有無である。ホームベースを「円」で囲うかどうか——たったそれだけの違いで、平凡なデザインか非凡な存在なのかが分かれるのである。「円」を取り除く、かつ、「刻印面」という概念をしっかりと残した【第50回選抜高校野球】のメダルは、特殊裏面への挑戦の先駆けとなった一枚なのである。

おまけ1:やっちゃダメだけど意外とイケた【セントレア フー忍者】

 おまけということで、敢えて取り上げるまでもないかもしれないものを敢えて取り上げる(なぜ?)。この【セントレア】のメダルは、販売機に「刻印できません」と書かれていたにも関わらず、刻印してしまったものである。結論から述べれば、ご覧のとおり刻印は一応できている。左上の侍の頭を多少切り刻んではいるものの、鎧兜が防いでいてくれることだろう。

 【セントレア】がこのメダルを「刻印できません」としたのは、やはり「刻印面」という概念によるものなのではなかろうか。「刻印面」は「(基本は)円形で囲われたザラザラ面」という概念があるために、それを敢えて排したこのメダルでは「刻印不可」としたのではないだろうか。しかし現実的な話をすれば、あの刻印機の威力をもってすれば、なんならおもて面にだって実は刻印できる。ある意味では「刻印できないメダル」というのは存在しないのである。

 【セントレア】はオークコーポレーション系の、記念メダルに精通した販売場所である。それだからこそ、このメダルに「刻印できません」という注意書きを施したわけである。観光地にありがちなメダルのことがよくわかっていないお店だったら、別に平気で刻印させているのではないだろうか。

おまけ2:意外と珍しい裏面着色の世界

比較参考:【清洲城】。恐らく同じ金型を使用
インクジェットプリント
裏面全面に施されたインクジェットプリント

 敢えて取り上げるまでもないメダルを〜(以下同文)。メダルの着色は注射器によるものであれインクジェットプリンタによるものであれ、それを施すのがおもて面であろうと裏面であろうと技術的に何か違いがあるわけではないので、裏面に着色が施されたメダルが珍しいのは、単に発想力の問題である。しかし、その発想力が湧かない。「着色はおもて面にするもの」という固定概念が裏面着色の誕生を阻害するのである。

 インクジェットの登場により裏面の彩りが華やかになったメダルもチラホラ見られるようになったが、昔ながらの注射器による着色裏面メダルはかなりレアケースである。特に【いわて花巻空港】メダルの存在感は際立っている。手に入れた時、「おっ、珍しい」と思ったものである(小並感)。

おまけ3:先を越されちゃった……刻印面はあれどすでに刻印がされちゃっているパータン

パータン1
パターン2
パターン3

 刻印が先にされちゃっているパターンのメダルでも種類があり、「刻印面はあれど明らかに刻印機によるものではないもの」(パターン1)「刻印機によるものっぽく、大量生産するなら大変そ〜なもの」(パターン2)、「刻印機によるものではなく、かつ、刻印機っぽいところもやっぱり刻印機じゃなさそうなもの」(パターン3)とある。

 パターン1は、結局刻印はできないものの「刻印面」という茶平工業製メダルのアイデンティティがしっかりとその存在感を示しているので、あらゆる記念メダラー達に受け入れられやすいのではないかと思われる。

 パターン2もいわずもがなで受け入れられるだろうが、それよりもなによりも、これ一枚ずつ人があの刻印機で刻印していっているのなら、めっちゃ大変じゃね? と余計な心配をしてしまう。入力するのがまずめんどい。

 パターン3は、パターン1とほぼ同様の造りなのだが、下のシリアルナンバーの「207」の部分だけは刻印機で施されたっぽい数字の刻印である。しかし、あの刻印機で刻印したのならば、この箇所にこの向きで刻印することは不可能なはずなので、何らかの特殊な刻印機があるということなんですかね? どなたか何かご存知であれば、ぜひご一報を。




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