大阪府【通天閣】 記念メダル

 

 大阪は「新世界」という場所の中心に位置する【通天閣】は、約1.4キロ先、歩いても20分以内の距離にある【あべのハルカス】によって、展望台としての存在意義を完全に失った。あべのハルカス展望室から望む光景の中では、この通天閣すら、鉄道博物館などにあるミニチュアジオラマ模型の一部ような存在と化す。大阪にそびえ立つ高層ビル群の中でも、文字通り飛びぬけた存在ではないのだ。

 しかし、それでもいまなお数多くの人が訪れている。平日でも入場まで待ち時間数十分はザラであり、「大阪の観光名所といえば?」という問いかけに真っ先に思い浮かぶ先の一つとなっている。その人気の在り方は、他の「古き良き観光タワー」が見習うべき点が多々ある。

 前述のとおり、通天閣はもはや展望タワーとしての魅力はゼロに等しい。そこで行った改革は、「とにかく儲けよう。お金を落としてもらおう」という大阪のあきんど魂の総決算ともいえる施設への徹底した転換である。

 まず現在の通天閣には、通天閣正面にある地下へと続く入り口から入ることになる。昔はタワーの真下にあるエレベーターから直接2階に上がる仕組みであったが、いつのまにやら変わっていた。この地下への入り口は、かつてはお笑いだか漫才だかを披露する劇場への入り口であった。時代の流れは、このように古き良き文化を残す場所にも確実に変化をもたらしているようである。私が「キャラと愛嬌で大抵のことは許される若手」から「キャラと愛嬌で大抵のことを許してもらおうする若手を許せなくなったミドル」へと変貌してしまったのも致し方ないことであると言える。

 地下へ降りると、「チキンラーメン」や「うまい棒」をはじめとしたグッズやお菓子が販売される「メジャーなお菓子ショップ」のような空間へとたどり着く。観光客はここで日本の駄菓子やチキンラーメンに触れ、きっと財布の紐がゆるゆるになるのだろうが、本当の戦いはここからである。この奥に通天閣への入場エレベーターがあり、まずここで待たされることになる。

 エレベーターを昇ると、またまた行列ができていて並ばなければならないのだが、ここからがこの施設の巧みなところである。行列に並んでる間も飽きさせないように――といえば聞こえはいいが、ビリケン様を祭った祠があってそこに賽銭をさせようとしたら、「お金を投げて見事届けばいいことがあるかも」みたいなゲーム要素を含んだ賽銭をさせようとしたり、「将棋の歩は成金になることができる」なんて理屈を解説して「歩」の形をした賽銭箱に賽銭をさせようとしたりと、「待ち時間にとにかくお金を放出させよう」という徹底した構成になっており、ここまで来るともはや見事という二文字しか頭に浮かばない。賽銭だけではなく、行列に沿うようにして壁一面にガチャガチャが配置されていて、日本のミニチュアが脚光を浴びる昨今、観光客達はどんどん買っていた。また、行列の途中には全員「義務」の写真撮影スポットがあり、大阪魂の塊のようなお姉さんたちが「はい、つう、てん、かくにんしまーす」とシャッターを押し、「綺麗に撮れタワー」と写真の購入有無を迫ってくる。もちろん買わなくてもよいのだが、「ここまで恥ずかしいことを全力でやってくれたのに、買わなかったら申し訳ない」という気持ちになるほどの全力投球なので、断るのは少しの勇気と冷酷な覚悟がいる。もちろん私はこういう写真を買ったためしがないが。行列の末にようやく展望室へのエレベーターを昇ると、そこには昔ながらの、想像が容易につくような展望が広がる世界がある。そこにはまあ特段の感慨はないのだが、帰りからがまた他の展望タワーとは一線を画す。階段にて一階下に降りると、そこには昭和の歴史を展示するコーナーと、「グリコ」の世界観を形作ったコーナーが混在するような空間に到着する。ポッキーがあったり昭和のミニチュアがあったりとするのだが、グリコのブースでオリジナルなグルメを販売する場所があって、ここでもまたついお金を落としてしまうのである。行列に並んで疲れた体につい甘いものを補給したくなる心理を巧みについた構成なのである。何も買わなかったが。

 結論を述べると、あべのハルカスの出現により、通天閣もだいぶ変わったなぁということである。人によってはこの通天閣のやり方はだいぶ阿漕でえげつないやり方にとられるだろうなぁと正直思う。ただ私は、今までどおりの運営ではまず間違いなくつまずくことがわかりきったなかで、生き残り策に必死に舵を切ったこの改革に天晴れという気持ちである。危機が迫りくることが分かっていてもなかなか変われないのが「組織」というものであることを日ごろから感じているので、ここまでの転換は当然社内からも批判があったことは容易に想像できる。一般人が考えることは、大抵社内シミュレーションでも浮かぶものである。それでも徹底的にやる道を選び、それで生き残っているこの通天閣は、人がもつ良い意味での「しぶとさ」の象徴であると私は思うのである。

(追記)

 今までありそうでなかった「リラックマ」の記念メダルが、ここ通天閣で発売された。私は年甲斐もなくリラックマが大好きなオジサンなので、この記念メダルはどうしても入手したかった。そして入手してわかったことは、リラックマは記念メダルになると白眼になるということであった。白眼むいててとってもこわいリラックマであった。

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