特集ページ【記念メダル漫画『旅愁マスク 観光系』 ほりのぶゆき】

世界で唯一の記念メダル漫画をこの手に……Amazonすげー編

 現役の有名記念メダラーのお一人であるkaraさんが、ある日「記念メダル漫画」なるものを発掘したことをツイッターで報告された。

 現在とは一線を画す絵柄に現代っ子たちは正直拒否反応を起こすかもしれないが、幼き頃に父親が通勤電車で読む用にキヨスクで買ってきていた往年の『ビックコミックスピリッツ』を愛読していた私としては、それこそ「旅愁」にも似た懐かしくもほろ苦い思いがふつふつと沸き起こるような、何とも言えない味わい深い気持ちとなる一冊である。karaさんのツイートにもある通り、マンガ図書館Zという無料マンガサイトにてタダで読むことができる。で、もちろん私は一度無料で全てを読んだ。が、所詮は「無料」なので、いろいろとめんどくさい。スマホで読むと画面が小さ過ぎて比喩ではなく「読めない部分」があるというのもさることながら、数ページ進む度に表示される広告がうざ過ぎて、とても集中して内容に入り込めない。もちろんだからこその「無料」であるわけで、そのこと自体に文句があるわけではないのだが。

行く手を阻む巨乳少女。「このページの広告料は作者の皆様に還元されています」という注意書きもあり、もちろん文句なんか言えません。

 ただ記念メダルブロガーとしてはじっくり読み込んできちんと【特集ページ】としておこしたいと思った&かつては書評ブログも頑張っていた読書好きとしては、古い考えのようだがやはり「紙の本」が良い——ということでアマゾンで検索したら、なんともはや絶版で単行本は存在しないようなのであった。

が。

日々の買い物の7割がもはやAmazon依存と化した私でもよく知らなかった「アマゾンオンデマンド(ペーパーバック)」というAmazonのサービスがあるらしく、現在でも絶版本を紙媒体で入手することができるのであった。いやはや時代の進化が凄すぎて、もはや何が何やらである。今回はあくまでマンガに関する記事なので深く掘り下げはしないが、神保町の古書店とかはマジで経営がやばい時代になりつつあるのではなかろうか。出版社からしてみれば在庫を抱えずに専門書等の高額な絶版本をもう一度販売することができるようになったわけだし(文系の研究者はたぶん紙で読みたいという人が多いと思うので)。Amazonが相手なので出版社側がどうせ買い叩かれることになるとは思うのだが。

↑これ。ちなみにkindle版(電子書籍)は324円なので、普通に考えればそちらがよいかと↓。

 そんなわけで、無事紙媒体の「単行本」が手に入ったよーということで、ここでちょっと紹介だ!(高田延彦風に)

表紙には「この記念メダルを販売してほしい!」と全国の記念メダラーが熱望するような記念メダルの図案が!
いかにもペーパーバック然とした簡素な裏表紙。本にはカバーがついているのが当たり前の日本ではあまり馴染みがない文化であるが、コンビニ専売のコミック単行本とかはこういう形の物が多くなったね!
私は読み終わった本は基本二度と読まないのでブックオフ行きなのだが、この本はとりあえずとっておこう。バイブルや!

 と、白々しいくらい「きちんと購入しましたよー」ということをアピールしたところで、内容チェックだ!

世界で唯一の記念メダル漫画をこの手に……偉大な先人編

※以下、画像は全て筆者所有の『旅愁マスク 観光系』単行本(ペーパーバック版)より引用。

 さて、『旅愁マスク 観光系』とは、漫画家「ほりのぶゆき」氏が描く、記念メダルスポットを巡る旅マンガである。物語開始当初は旅先のパチンコ屋でいわゆる「旅打ち」をして負けが込むニヒルな男が主人公であったのだが、途中からいろいろな設定がめんどくさくなったのか作者のほりのぶゆき氏自身が登場するようになる。もちろん、その辺の細かい話は実際に読んで確かめてね(´ε` )ヤクソクダゾ

最初はこういう男が主人公だったのだが……
突然、こうなります

 で、説明するまでもないのだが、作中でほりのぶゆき氏が自分は記念メダラーであることを告白するシーンがあり、同時にかなり高レベル(所有枚数基準)であることが判明する。

「なんか途中から疲れた」に、300枚以上所有の記念メダラーは恐らく皆共感だ! 一方で、やっぱりコインアルバム (恐らくテージー製)に収納するよね! となんか嬉しくなる。形状的に「コインフリーアルバム B5S 収納コイン枚数96枚 C-34」っぽい。

 当初の設定としては、旅打ちで負けた主人公は「旅先でパチンコなんてやってないで、もっと旅らしいことをしよう」と思い、観光名所の代名詞「お城」に目をやる。そんな主人公のもとに「現実王(リアル王と読む)」を名乗る黒い仮面のおっさんが現れて、とにかくパチスロをやらせようとする。しかし、そんな現実王には目もくれずお城に登上した主人公は「旅愁マスク」へと変身し、記念メダルを額の穴にハメ、旅愁に浸るのであった。

何かと良いヤツ現実王さん
旅愁マスク
【さっぽろテレビ塔】で私はまさに旅愁を感じました。ザ・地方都市って感じで……
全然関係ないけど、このデザインの記念メダルをぜひ販売して欲しい。

 途中メダルに飽き飽きしてしまったのか(記念メダラーあるある)メダルとは関係のない場所へ行く話もあるのだが、基本的には各話当時記念メダルが販売されていた場所へ訪れた話となっている。そして、その記念メダルスポットの感想をものすごく正直に語っているため、同じ場所に行き同じように記念メダルを購入した者は「わかるー!!!」となるわけである。そのため、当然ながらその場所のメダルを入手している方が、より深く話が楽しめるということになる。

 以下、私の心に響いた記念メダルあるあるの一部。

どうせ遠出するならどこかのメダル一枚は欲しい——というのは、記念メダラー共通の心理なのではなかろうか。うんうんと頷いているそこのあなたはすっかり記念メダル中毒である。
「興味のない人から見ればまったくもって?」なことが、自分にとっても?になってくるのは、旅に疲れた頃に陥るよくある心理である。自分は一体何をやっているのだろう……と。
私はさらに深めて「そもそもマネキンに手を出した時点で失敗」だと思っております。マネキンが置いてあることで客が狂喜乱舞することはまずない。

 しかし、そうした記念メダルにまつわる数々のあるある話もさることながら、個人的に最も強く共感したポイントは「旅の辛さ」にあるような気がする。

世界で唯一の記念メダル漫画が語る「メダル道の試練」

 そう、「旅」とは、辛いものなのである。みんなでワイワイ楽しく行く「旅行」とは、似て非なるものだ。

 私の体感的には、3泊4日までは楽しいだけの旅で終えることができるという実感がある。しかしながら、3泊目の夜——この日に、ふと少し考えてしまうのである。「疲れたな」——と。

 で。

 4日目が帰りの行程を含む日程であるならば、それでも全然大丈夫なのである。「明日は○○でちょっと遊んで、あとは帰るだけだ! あー、楽しかった〜寂しいな〜」なのである。しかしながら、例えばこれが1週間の旅であるならば、うまく言葉にならないが「なんだか息切れがする」みたいな感覚に陥り、純粋な気持ちで旅が楽しめなくなってくる。特に、記念メダルを一気に回収することが目的のような旅であると、自然と気持ちも実際の行動もどこか焦ったものとなり、夜のふとした時間に「自分は一体何をやっているんだ……」という気持ちに突如襲われる。自分のやっていることの意義をふと考えてしまうのである。別に意義なんてないのに。

 旅は、非日常だから面白い。だから、時間が経ち「慣れ」が生まれ、少しだけ日常と似た感覚に近づくと、せっかく計画した旅の行程が、なんだか義務をこなしていくかのような淡々としたものへと変わってしまう感覚が生まれる。今まで消費した費用と時間をふと考え、普段の生活ではありえないくらいの激しい消費具合に「何やってんだ……」感が一層増す。

 つまり、非日常からふと目覚める時間があるのである。それでも旅は続くので、その瞬間、ワクワクしていたはずの「予定」が、こなすべき「義務」へと変わるのである。

まさにこんな感じ……

 出発前はワクワクしていた憧れの長期間の旅が、想像のような楽しいことばかりではないことに気がつく瞬間である。

 このことには、旅好きな人がする旅と、記念メダラーがする旅とには根本的な違いがあることも関係しているような気がする。旅好きな人は、そもそもそんなに急いでいないし、「○○しなきゃ!」という縛られるものもあまりないのではないかと思われる。自分の興味がある行きたい場所だけに行き、途中で興味を惹かれた場所に寄り道し、おいしいご当地グルメに舌鼓を打つ。一方で記念メダラーの大規模遠征は、常に「施設閉館時間との戦い」「効率重視の行程」「根本的にはあまり興味がない場所の連続」という、要素だけ取り出せばネガティブな面が目白押しなのである。そして何より、目に見えて金銭的な消費が激しい(記念メダル代+各入場料+多くの場合駐車場代)。

 ふと我に帰った瞬間、それらのことをいろいろ考える。旅好きな人がよく語る「人との出会い・触れ合い」などは皆無であり、これは本当に、あの憧れていた旅なのか? と。自分は一体何がしたいのか、と。

記念メダルとは一体なんなのか、と。

 私からのアドバイスとしては、そのようにしんどくなったときは、半日でよいのでゆっくりする時間を設けることである。例えばスーパー銭湯的なところへ行って入浴だけではなく岩盤浴から休憩室でのゴロゴロタイム、なんならマッサージまで満喫するとか、あるいはカフェでのんびり読書をしてみるとか。なんなら旅とは全く関係ない買い物をしに行くなどでもよい。

 とにかく、一度息抜きをすることが肝要である。ポイントはこれが17時以降から〜ではだめで、重要なのは「今日はもうフリーだ!」と思える、重荷を降ろせるような、何ものにも縛られていないと実感できる時間を作ることである。

 一度息を抜くと、不思議なもので、また次の目的地に早く行きたくなってくるのである。まさに「仕切り直し」というやつで、びっくりするくらいフレッシュな気持ちでまた旅立つことができる。

 記念メダルを巡る旅は、とかく日程を詰め込みすぎるきらいがある。それはもちろん決して暇ではない社会人が限られた時間でできるだけ多くの記念メダルを集めたいという大望を抱いているからで、記念メダルを重視した旅をする限り致し方ない面が大きい。しかしそれでも、少しだけ肩の力を抜く時間を自分に対して設けて(というかなんなら許して)あげれば、すぐにまた旅のワクワク・楽しい気持ちを思い出せるということを頭の片隅に入れておくことをおすすめする。ちなみに私は先日の九州遠征の際、5日目の午前中からお昼にかけて、ガストのドリンクバーでコーラをがぶ飲みしながら「ブログを一本書き上げる(時間無制限)」という時間を設けて、かなり気分転換になった。まあ結局その後【小倉城】に向かったんだけどね……。でも、行っても行かなくても良いという気持ちで過ごせる時間が重要なのです。

まさにこんな感じ。これも【浜名湖花博】に寄れたのは、一晩休んだ+行っても行かなくても良いという気持ち(状況)になれたからだと思うのよね

 この作品の中で語られる旅の辛さは、「記念メダル巡り」というおおよそ世間からは特殊な旅に興ずる記念メダラー達の苦悩を代弁してくれているものなのである。それでも私たち記念メダラーは日々「茶平工業公式HP掲示板[メダリアン広場]」を閲覧し、新しいメダルが発見されたとあればすぐさま入手計画を思い描く——この道がどこへ続いているのかなどわからないまま歩み続けるのであった……

でも、記念メダルがメディアになってて嬉しいな

 記念メダル収集がマイナーな趣味であることは疑いようがない。いまだかつて「記念メダル集めてます!」といって半笑いをされなかったことはない。「あの、動物園とかにあるやつですか?」(「動物園」が「タワー」等である場合あり)と戸惑いを含んだ愛想笑いで確認される確率100%である。「おおっ、いいですね!」とか「実は僕もなんですよ〜」とか言われたことは一度もないし、「私も興味あります〜」と女子にときめかれることなどもってのほかである(そもそも女子にときめかれたことがないという根本的問題はさておいて)。

 昨今のテレビの例を挙げれば、「御朱印特集」は結構見かけることがあるが、記念メダルが特集されることはほとんどない。かつてレジェンドな記念メダラー「リャド好き!」さんが数回テレビ出演されたことがあるのだが、逆に言えばそれだけである。歴史を紐解けば非常に息の長い物で、しかも「あの観光地によく置いてある〜」「名前とか刻印できる〜」とか説明すれば大抵の人が「見たことはあります」と微妙な言い回しで認知度の高さを物語ってくれるものでありながら、雑誌等で特集されたことはほとんどないと思われる。

 誰もが知っているのに、メディアが注目してくれない趣味——それが記念メダルなのである。

 そんな私の野望は、いつかTBSの『マツコの知らない世界』に「マツコの知らない記念メダルの世界」で出演したい! というものなのだが、野望は信長並みに野望のままである。

↓野望でおなじみのこの方並みに出演したいのです。

 知名度はあるのにメディアからは総スカンともいえる待遇を受けている記念メダルという文化において、現在のところ唯一といってもよい「形に残る姿」で取り上げてくれているのがこの『旅愁マスク』なのである。単純に「自分の好きなものが漫画になっているのが嬉しい」という気持ち、わかっていただけるだろうか? もっといえば「自分が所有しているメダルがイラストになっているのが嬉しい」という大好きなあの人が自分の名前を知っていてくれたことに喜ぶ乙女心にも通ずるこの気持ち、わかってくれますか?(わかりませんな)

【大鳴門記念館】とか。ちなみにメダルを購入するシーンがなくてもいつのまにかおでこにハマっていたりするので、要チェックやで!(しかも結構ある)

 「このメダル、わかる! だって持ってるもん!」と自分の知っている知識をやたらと披露したがる幼稚園児のように、見たことあるメダルが漫画に登場するたびにその興奮と喜びは増していく。そう、マニアは自分が所有しているモノがドンピシャでメディアに取り上げられると、言葉にならない喜びを感じるものなのである。『旅愁マスク』との出会いは、まさにそんな喜び満載のものであった。

 ぶっちゃけ記念メダルが好きでなければ面白いかは微妙なところではあるのだが(核心すぎる話)、記念メダラーであればツボにハマるポイントがこれでもかと詰め込まれた作品であるといえる。

 記念メダル史において、間違いなく歴史に残る一冊である。今まで埋もれていたのが信じられない。ほりのぶゆき先生、ごめんなさい。サインください(謝ってない)。




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