特集ページ【メダル王への道(オリジナル記念メダル製作への挑戦)】

↓今回製作した実際の金型

茶平工業製記念メダル金型

表面金型名「My蔵」 裏面金型名「IEの浅川です!」

勇者は世界を救えてもメダル王にはなれない

 私がメダル収集を始めたのは、ドラクエⅣが発売された小学生のときである。メダルとの出会いは人ん家の壺やタンスの中という衝撃的なものであった。が、それ以上に衝撃を受けたのが、隠し場所のその奥深さである。確か、ゲーム終盤のどこかのダンジョンで、行き止まりではあるがなんとも意味ありげな沼地があり、トラマナを唱えてなんとなくその沼地を奥まで進み、何もなかったもののなんとはなく隙間のような窪みを調べたら、「なんと! ちいなさメダルを見つけた!」と表示されたのであった。ちいさなメダルは、人の家の壺やタンスの中だけでなく、「意味ありげな隙間や窪みにも隠れている」という事実を知り、もう一度世界を巡り直すこととなった。そして意味ありげな場所を片っ端から「調べる」と、やはり出てくるちいさなメダルの数々。当時はネットなどという発達した情報伝達手段はなかったので、この情報をクラスにもたらした私は一躍クラスどころか学校のヒーローとなった。少なくても私が通う小学校では、私が一番初めにこの「隠しメダル」の存在に気づいたのであった。そういうものが存在するという情報が一度流れれば、情報はどんどん掘り下げられていき、やがて私が知らなかった場所にもメダルがあるという発見報告が相次いだ。私はそれにゾクゾクした。「はぐれメタルヘルム」とか「きせきのつるぎ」とかそんなものはどうでもよく、ただちいさなメダルの発見・収集が楽しかった。ちなみにドラクエ4においてちいさなメダルは全部で32枚あるということを、だいぶ経って、ネット情報で知った。世の中は進んだ。現代であれば、恐らく私は学校のヒーローにはなり得なかったであろう。

 時を経て「大人」と呼ばれる年齢になり(しかし真の「大人」には未だなれていないし、あまり出会ったこともない)、すっかりゲームもやらなくなった。スマホにゲームアプリが入っているのを見るだけでも嫌なくらい、ゲームとは縁のない生活となってしまった。恐らく高校生までで一生分のゲームをやってしまったのだろう(1日15時間とかやってたし)。そんな私が、あのドラクエ4で感じた、言葉では言い表せられない高揚感を感じる出来事が茶平工業製記念メダルとの出会いである。ドラクエをプレイし、かつ、茶平恋行政記念メダルを収集する者の多くが、あの「ちいさなメダル」と記念メダルを重ねているものと想像する。もちろん私もその一人である。

 私はかつて、軽自動車のキャンピングカーを所有していたのだが、その軽キャンを購入して初めての遠出が、鳥取県であった。道の駅での初めての車中泊を経て、憧れであった鳥取砂丘を訪れ、続いて「水木しげるロード」へ向かった。「じゃらん」に載っていたからという、ただそれだけの理由であった。

 そこで【水木しげる記念館】に何気なく立ち寄ったら、あの青い自販機があった。そこで思い出したのが、まだ小学校に入る前に父と訪れた【サンシャイン60】で購入した、自分の名前を刻印した金メダルのことである。幼稚園のカバンに付けていた記憶が鮮明に思い出された。記念メダルを収集していない多くの一般人が抱く最初の感想「懐かしい」というのが第一にあり、旅の記念になると思い購入した。若気の至りで、当時付き合っていた女の子の名前を刻印してしまったがためにその後このメダルは破棄される運命にあるのだが、とにかくなんとなく鬼太郎が一反木綿にまたがる絵柄の記念メダルを購入し、水木しげるロードを後にした。で、その日特に深い理由はなく、ただ通りかかったから車中泊場所に選んだ道の駅にて、翌朝目覚めると【青山剛昌記念館】なるものが隣接されていることに気がついた。名探偵コナンはそこそこ好きだったのでもののついでにと寄ってみたら、なんとここにもあの青い自販機があったわけである。そこで思い至ったのは、「この記念メダルを目的にすれば、自然に旅の目的地が決められるなー」ということである。というのも、私は元々バイク乗りでよくツーリングに出かけていたのだが、「旅をしたい!」という強い想いがあっていざ旅に出ようとするときに一番悩むのが、実は目的地なのである。旅に出たい! 旅をしたい! という憧れにも似た気持ちは多くの人がもっていると思うのだが、「ではどこに行きたい?」と聞かれると、答えに窮する人も多いのではなかろうか。漠然とここに行きたいという想いがあっても、ではそこに行って何をするのか? 具体的にはどこのどういう場所に行きたいのか? というところがはっきりとしないまま、ただ漠然と「旅に出たい」という想いが先行することは実はよくあることである。だからこそ、格安パッケージツアーなどが人気なのだと考える。人間は漠然と「旅に出たい。どこか遠くに行きたい」という想いを抱えながらも、その「どこか」をしっかりと考えることをめんどうだと感じる実に怠惰な生き物なのである。

 それが、旅の目的地が自然と決まるようになったのである。具体的に旅行日程を考えなくても、どこでも寝られるキャンピングカーがあり、日本各地にちいさなメダルが点在している。そして当時はETCで高速が1000円の時代であった。毎週末に遠出をするようになり、旅に出るたびに何かと学ぶことが多かった。

 だからこそ、「記念メダルは自分で現地に赴いて購入したものしか認めない」という王道のスタイルにこだわりをもつ気持ちはよく理解できる。何を隠そう、私も昔はそうだったからである。そして今でも、それこそが記念メダルの本質であると私自身思っている。

 ただ、記念メダルの数が増えてゆくと、だんだんと記念メダルそのものの魅力に魅了されるようになってきた。元々収集癖があったからこそ始まった趣味でもあるので、正規のルートでは物理的にもう手に入らなくなった記念メダルも欲しいと思うようになってきた。そして元来は「自分がどのメダルを所有しているかをどこでも確認できるようにするため」に始めた記念メダルブログを整理していくうちに、「記念メダル図鑑」のようなものを作りたいと思うようになってきた。いわゆる「ポケモン図鑑」と発想は同じである。だから私の記念メダルブログは、他の人の記念メダルに関するHPとは微妙にニュアンスが異なるのである。他の人のwebコンテンツは、「販売に関する情報提供」という意味合いが強いと思うのだが、私のブログは純粋に「メダルの紹介」というコンセプトで構築している。だから、今でも販売しているかどうか、青い自販機がある場所はどこなのかといったことには言及していない。記念メダルそのものに魅せられた今、とにかく記念メダルへの愛が溢れるコンテンツを目指しているのである。まあ、メダルの話というより自分の話しか基本していないが。。。

 そんな私が目指すところは、ポケモンマスターならぬ「メダル王」なわけである。世界中ならぬ日本中に散らばる「ちいさなメダル」を収集することが私のライフワークとなった。「旅がライフワーク」とは微妙にベクトルがずれたわけである。

 「メダル王」への道の一つとして、かねてから「オリジナルメダルを作りたい!」という願望が非常に強くあった。かつてkiwwyさんという方が個人でオリジナルメダルを製作しその情報を公開していらっしゃったので、実現は可能であることがわかっていた。そして先に言及してしまうが、実際にオリジナルメダルの製作を依頼するに際して、このページの情報はかなり有用で、かなり見通しをもって臨むことができた。実は多少急いでいたので、流れがわかっていると準備がスムーズにできたため、大変助かった。この場を借りてお礼申し上げます。

 また、現在では「オリジナル記念メダルSHOP」さんという誰もが成し得なかった事業を一コレクターの方が始めて誰もが自分の思うようなメダルを製作できるようになり、その発想力と行動力を大変尊敬し、そのメダル愛に感服するばかりである。が、やはり金型から製作する茶平工業製記念メダルを一度は作ってみたいという想いが強かった。

儲けを考えなければ夢は叶う

 さて、前置きが超絶なまでに長くなったが、オリジナルメダル製作の話である。まず製作に必要なものを列挙すると、

①気持ち

②デザイン

③金

である。金があれば叶う夢ーーそれがオリジナル記念メダルの製作である。世の中全てが金とは言わないが、金がないと何もできないのも事実である。金も「何か」も必要であることは多いが、金がなくても手に入るものというのは実に少ない。それが可能なものとはなんでしょう、砂とか? 

 そんなわけで肝心要の費用であるが、残念ながら詳細は記せない。だからなんとな〜くぼやかして記す。まず大雑把に必要経費を分けると、「おもて面金型」「裏面金型」「メダル」に分けられる。で、それぞれの金額を何かにたとえようかな〜と思ったんだけど、まったく思いつかなかったので(※偉そうなイメージで)、さっさと総額をたとえてしまう。

総額でいえば、、、高スペックのMacBook Pro 15 +いろんなオプションパツーツを買ったくらい。みたいな。伝わりますかな〜

 本来の最低ロットは「500枚」であるらしい。しかし今回は特別に「250枚でOK」とのことであった。ただメダル1枚の単価が100円以上違うので、メダル代金の総額で言えば、枚数は倍違うのに金額は実は1万円程度しか変わらない。もちろん私にとっての1万円は命より重いのだが(嘘です)、金額がデカくなると1万円が多少の差に感じてきてしまうマネーマジック。家を買うときみたいなものである(買ったことないけど)。

 が、やはり命は大事ということで、250枚にした次第である。とにもかくにも、数を多くすれば安くなるというのがいかにも業販な感じがして、なんだか楽しい。

 ちなみに、一色展開では捌くのが苦しいと考え、「金、銀、黒の三色合わせて250枚でも良いか?」と問い合わせたら「別に良い」「枚数を合わせなくてもよい」ということであったので、金100枚、銀100枚、黒50枚とすることにした。ちなみに黒は「黒ニッケル」によるメッキで金銀と比べ単価が高く、納期も1、2週間程度遅くなる。そのため、今回は記念メダルを必要とするイベントにギリギリ間に合う形となって、少しヒヤヒヤした。

 金型代もデザインによって多少価格が前後するらしい。また、5万円の手付金を先に支払うことになる。

スマローオリジナル記念メダル製作を決断したワケ(何もなきゃ決断できんしこの金額)

 記念メダル製作の目的は「マイクラC+Cオーナーズクラブの記念品」という側面と、「記念メダルは売り上げに貢献できるのかの実証実験」という側面の二面性があった。二つやりたいことがあったので二つとも盛り込んだ結果、表と裏とでなんら繋がりのない記念メダルが出来上がってしまった。専務が「目的が全くわからないので金型の名称がこちらで付けられない」とおっしゃったのも納得である。

 次にデザインであるが、これは「ai」という拡張子のデータで欲しいという指定があった。「ai」は「イラストレーター」という美術科やデザイン科の学生がよく使う本格的なペイントソフトの保存形式で、正当な道をゆくならばこれらのソフトを入手する必要がある。もしくは、別料金で「jpeg」等のデータから茶平側でトレースしてくれるらしい。私はその辺はうまくやったとだけ記しておく。ちゃんと「ai」で入稿した。

↓入稿したデータ

私の場合、実は依頼する段階から既にデザインを描き上げていた。そして、Kiwwyさんのページを見ると何回も写真を取り直したり、茶平側といろいろとやりとりしたりするなどいろいろと試行錯誤された様子が記されているが、私の場合はこの二つのデータを送ってそのままOKとなった。デザインの複雑さの違いか、はたまたこだわりの有無の違いか。

 その後手付金を支払って、あとはひたすら待つーーという感じであった。今回の件を茶平側に打診したのが1月の中旬ごろで、その後、実際の見積書を見てビビったこともあり当初は連絡の遅れもあったが大体ぽんぽんぽんと進んでいき、メダル完成の連絡が入ったのは3月の中旬であった。よって、全体的には大体2ヶ月程度かかったことになる。が、これは「黒ニッケルメッキ」のメダルを発注したことによる遅れがあるので、金や銀ならばもう1、2週間は早くなるものと思われる。

 メダルが完成すると、本来は行かなくても良いところを私のたっての希望で直接受け取りに行き、そのついでに会社見学をさせていただいたのはこの記事にあるとおりである。この会社見学ができただけで、多額の費用をかけて記念メダルを製作したことに一片の悔いなし! となった。本当に良い経験であった。記念メダルへの愛は深まるばかりである。

 今回、自分が思い描いた記念メダルを製作するにはどれくらいの費用が掛かるのかということが知れて、記念メダルのまた違った一面を理解でき楽しかった。特に、メダルを販売する施設や業者の思惑のようなものがうすーくではあるが感じられるようになり、今までにない視点でも記念メダルを見られるようになった。例えば、他記事でも書いたが【宝塚歌劇】の記念メダルは、ひと組みの金型で5種類のプリントメダルを作っていて(しかも900円で高額で販売していて)、非常に減価償却率の高い販売の仕方であることがわかる(ちなみにプリントメダル用の治具も裏面が同じなら1種類で良い)。また【138タワーパーク】の2種類のメダルは、おもて面は同じで裏面が異なるという変わったパターンのメダルであったが、「裏面の金型なら半分以下の費用でできるからケチったのかな~」などと担当者の苦悩を勝手に想像してみたりする。私は組織や流通の仕組みみたいなものが好きなので、こういう想像は楽しい。ヤな客かもしれないが。

 まとめると、多額の費用が掛かったものの、それを後悔することは一片の要素もなかった、ということに尽きる。コツコツ貯めた500円貯金が一気に吹き飛んでもう二度と戻っては来ないが、夢と覚悟とはそういうものなのである。

 壮士一たび去りて復た還らず(司馬遷『史記』「刺客列伝」より)

 (立派な人は一度立ち去ったら、二度と戻っては来ない)

 私の500円たちも、己の役目をよく理解し、立派に旅立っていった。私はただ、それを見送るだけである(支払いはちゃんとお札でしましたよ)。




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