邪道【名古屋オリンピック】 記念メダル

まるで開催されたかのように、そのメダルは光輝いている

 【名古屋オリンピック】というものをご存知だろうか? もちろん、実際には実現しなかったオリンピックなので、「名古屋オリンピック構想」というのが本当のところである。1988年に開催された「ソウルオリンピック」と最後まで開催権を争ったのは、名古屋だったのである。私は当然生まれていたが、全然記憶にない。それどころか、職場の同年代の愛知県民に聞いてみても、「はっ? そんなどえりゃーことが計画されとったのがね?」と言われた(誇張大)。

 2020年東京オリンピック誘致でもそうだったが、オリンピックの誘致には必ず反対運動が起こる。実際東京は一度誘致に失敗していて(2016年開催のリオに負けた)、その時の反対派の喜びようはなかなか大人げなかったのだが、その時喜んでいた人たちは2020年オリンピック開催のこの期待感をどのように受け止めているのだろうか? 一緒になってワクワクしていたらもはやギャグである。

 オリンピック誘致に反対する理由は、大抵「金銭面」と「環境面」である。そしてそれらの理由は非常にもっともなことが多く、がんばって反対している人たちこそ、実は非常に真面目にこのオリンピック誘致に対する問題を考えているともいえる。私のような頭パーパーで生きている人間達は、「わーたのしみー」としか思わないし、考えもしない。地球のこととか、国や都の財政などを気にして生活する時間なんて、1年間のうちに25秒あれば良い方である。

 【名古屋オリンピック】に関しても、要は金銭面と環境問題の面から大規模な反対運動が起こったらしい。選手村として長久手町(現:長久手市)の「青少年公園」が整備されることが計画されていたらしいのだが、ここは【愛知万博】の会場となった場所である。そのことを考えると、【名古屋オリンピック】が開催されていたら、【愛知万博】は開催されていなかったかもしれない。そもそも【名古屋オリンピック】が実現していたら、【愛知万博】をやろうという発想すら生まれてなかったのかもしれない。なぜなら、どちらも「都市の世界的な地位向上」を目的として誘致計画がなされたものだからである。【名古屋オリンピック】が開催されオリンピックの歴史に名古屋の名が刻まれていれば、万博の誘致は必要なかったといえる。

 そう考えると、開催権の落選は、名古屋という地方都市にとって、歴史的に非常に大きなターニングポイントであったと考えられる。どちらがよかったのかは永遠の謎であるが。

 ちなみに、「名古屋オリンピックが開催された」という歴史の「IF」が描かれた『ロスト・メモリーズ』映画がある(未見)。今度見てみよう。

そもそも前評判とかがあるのが怖いオリンピック誘致の闇

 【名古屋オリンピック】開催に関して、前評判では名古屋が優勢であったらしい。そのため、フライングしてこんな記念メダルまで作られてしまったわけである。その他、ヤフオク上では「名古屋オリンピック開催決定記念乗車券」というものもよく出品されている。切符の包装紙には「名古屋開催が決定した場合に備えて作成してたけど、ソウル開催が決まったから発売中止したもの」みたいなことが書かれていて、淡々とした文章に非常に哀愁が漂っている。

 名古屋の街は、反対運動が起きながらも、恐らく私のように地球や財政のことなど1年間に25秒しか考えない人たちによって盛り上がっていたことだろう。だから、落選という結果には、街全体が落胆したのではないかというのが想像できる。この記念メダルがどこの会社によって発注された物なのかは実は不明なのだが(詳細をご存知の方はぜひご一報を)、記念メダルをフライングで作っちゃうほど期待していたわけである。

 その落胆度を表す事実の一つとして、【名古屋オリンピック】推進の立役者であった当時の愛知県知事が、ソウルオリンピックの閉会を見届けた後、自殺をした。直接の原因、理由は謎のままだが、このことが全く関係ないと考える方が難しいのはいうまでもない。

 シビアな話になってしまったのでここで筆を置く。この記念メダルの詳細は不明なのだが、この一枚のメダルが歴史のifを語りかけてくるところが、非常に興味深い。記念メダルは日本の歴史を静かに語るのである。

記念メダルについて

 実は【ソウルオリンピック】の記念メダルも茶平工業が製造している。実にたくましい(茶平工業は発注されたものを言われた通りに作っているだけです)。

名古屋オリンピックがソウルで開催されました

 邪道な入手系記念メダルあるあるなのだが、私がこのメダルを手に入れた前後では、なぜかヤフオク!やメルカリで同じメダルの出品が相次いだ(そして出品者は異なる)。なんか定期的にこういう現象が起こるので、「シンクロニシティ」って本当にあるんだなとつくづく思う。理屈を超えた記念メダルの奇跡である(ごく一部の人間しか感じ取れない奇跡)。

 ある意味では、無事に開催されたとき以上に、歴史上の存在価値が高まった記念メダルであるといえる。私自身、このメダルを手にしなければ、恐らく一生「名古屋オリンピックなるものを開催しようとしていたんだ」という思考は巡らなかったと思う。

 記念メダルは静かに歴史を語るのである。

 

 




2 件のコメント

  • はじめまして。
    1988年にソウルオリンピックの後に自死したのは、もと愛知県知事であり、名古屋市長(その当時の市長は、2009年に98歳の天寿を全うされた)ではないです。

    以上をもちまして、失礼します。

    • ご指摘ありがとうございます。ただちに修正させていただきました。
      大変繊細な問題を長らく間違えていたことを恥ずかしく思います。
      ありがとうございました。

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