東京都【すみだ水族館】 記念メダル

 東京スカイツリーの文字通りのお膝元、「ソラマチ」にある【すみだ水族館】は、完全室内型の水族館である。屋外スペースが一切ないため、展示内容も非常に限られたものである上に、水族館のド定番「イルカショー」といったものもない。この条件だと、どうしても「学術的」であるより「カップル向け」の水族館にならざるを得ないだろう。なので、展示内容は、詳しい魚の解説等は気持ちの良いくらい一切なく、薄暗い照明やプロジェクションマッピングを駆使した雰囲気重視のものである。展示されている魚たちも、観賞魚のような展示のされ方である。

 もちろん、それが悪いわけではない。

 私は水族館は断然「学術的」な方が好きであったのだが、ここはなかなか良かったと感じた。水族館というよりも、むしろ美術館や博物館の特別展に来たのに似たような感覚であり、それはそれで斬新であった。ここまで割り切った水族館も珍しい。特に、メダルの図柄にもなっている「チンアナゴ」の展示は、なかなか笑える光景であった。あんなに大規模な「チンアナゴ」の水槽は他にない。

 また、この水族館の最大の目玉は「ペンギン」であるだろう。ペンギンの水槽が屋内にあり、かつ、上からその水槽を眺めるという造りは、実は珍しい。「ペンギン」というのは実は動物園にも水族館にも必ずと言って良いほどいるありきたりな動物なのだが(ペンギンに失礼な発言)、大抵は「屋外施設で柵の外から見る」か「屋内施設でガラス張りのスペースを見る」かの二択である。ここのペンギン展示は、まずらせん状になっている通路を進んで上からペンギンの水槽を覗き込むように見て、下に降りると水槽横からペンギンの泳いでいる姿が見える構造になっている。水槽横にはカップル用のシートが置いてあり、ラブラブしながらペンギンが泳ぐ姿を見られる。また、水槽が非常に綺麗なのでペンギンが泳いでいる姿がよく見える。キャッキャキャッキャ言いながらスマホで写真を撮ること請け合いである。

 そして、このペンギン展示を大きな目玉と成し得ている最大の要因は、やはり雰囲気づくりである。水槽が綺麗&照明が幻想的&ペンギンがかわいいというトリプルコンボにより、カップルがうっとりしやすいような雰囲気を作り出すことに成功している。

 例えるなら、夜空に映えるラブホのような雰囲気である(台無しなたとえ)。 

 非常に小規模な水族館であり、本気を出したらものの10分くらいで見て回れるような内容なので、2000円オーバーの入場料をどう考えるかはかなり微妙なところであるが、入場までの行列に並ぶ客層を見る限り、家族連れよりも30代前後のカップルが圧倒的に多かったことを考えると、「雰囲気の良いデートスポット」とという地位であるなら、まあ納得かなとも思える。親子連れで訪れても、値段に見合う楽しみはなかなかないのではなかろうか。水族館側からしてみたら「そんなことないよ!」というだろうが。

 余談だが、入場待ちの行列に並んでいたとき、すぐ後ろに20代後半くらいのカップルが並んでいて、男は普通の口調だが女は敬語という、付き合い始めっぽい雰囲気を醸し出していた。会話もどこか遠慮しがちな感じで、それでいて甘酸っぱい雰囲気のある、付き合い始め特有の初々しさが溢れまくっていて、会話を着ているだけで退屈が紛れた(下衆な退屈しのぎ)。

 笑顔溢れる会話をやり取りする二人であったのだが、不意に女の子の方が「ここの目玉はペンギンなんですよ。ペンギンがすごいんですよ~」と何の屈託もなく楽しそうに言った言葉に、男は不意に口をつぐんだのであった。

 みなさんは、なぜ男の表情が翳ったのか、おわかりだろうか?

 女とは、罪な生き物である。もし立場を逆にして男の方が同じことを言ったら、その日はもうまともに口を聞いてくれないこと請け合いである(偏見に満ちた発言)。しかし男は気丈にも気を取り直して、楽しい会話を再開していた。実に天晴であった。

 日本一高い木の下で、見知らぬ男のかすかなやきもちにそっと拍手を送った日曜日。

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