愛知県【新美南吉記念館】 記念メダル

 新美南吉は愛知県は半田の出身ということで、ここ【新美南吉記念館】は半田市に存在する。

意外となんだかシャレオツな建物で、綺麗な芝生などもあり、家族連れのための公園としての機能も果たしている。家族連れとはすなわち、「この人とこの人がエッチをしてこの子が生まれました」ということを周囲に自慢して歩くグループのことである(卑屈兼最低な価値観)。

 そんな【新美南吉記念館】の新美南吉とは、有名どころでは『ごんぎつね』の作者として知られている。私は全然『ごんぎつね』が好きではなく、特に小学校教師がこれを朗読してクラスの児童を泣かしたことを自慢する風潮が大嫌いである。泣かしたからなんなんだと。といってもこのことは別に『ごんぎつね』自体に責任はないのだが。作品自体のことをいえば、私はこの話を初めて聞いたときから、「まあごんが悪いんじゃね?」と思って、全然泣けなかったのである。先生が力を入れて朗読したのに全く涙を流さないかわいくない小学生だったといえる。そして「でもごんが悪いよね?」と平気で発言してしまうような憎たらしい小学生だったのである。先生は私のことが嫌いであったことだろう。

 『ごんぎつね』のストーリーの源流は、『オオカミ少年』に通ずるものがあると考えている。いつもいたずらをしていたごんが、改心して食べ物持ってきてあげたのに、いたずらしにきたと勘違いされて撃たれるわけだが、「オオカミが来る」といつも嘘をついてイタズラしていた少年が本当にオオカミがやって来ることを伝えても誰も信じてくれないのと同じで、「信用を失うとこうなる」ということの寓話であると思っていた。小学生の私は「ごん、かわいそう」と隣でしくしく泣いている女の子の言葉に驚きを覚えた。「えっ!? そういう見方なの!?」と。しかしこれは、私の方が少数派であることは教室中が物語っていた。

 つまり、私にはこの話の何が良いのかさっぱりわからないのである。記念メダルに描かれている狐はおそらく「ごん」であると思うのだが、僕にはきみの良さがさっぱりわからないよ、ごん。私は今までやりたい放題やってきておいて、ある年齢以上に達したらまるで今までのことは「若気の至りで、みんな良い思い出」みたいに都合よく振り返り、家族思いの善良なパパであるかのように振る舞う元ヤンキーが大嫌いなんだよ。自分でやったことの報いは必ず受けて欲しいし、人を不幸にしたのに自分は幸せになるなんていう矛盾が許せないんだよ。だからごん、君が撃たれてしまったのは仕方がないと思うんだよ。人の母親の今際の際のために捕獲した魚を、己の快楽心を満たすためだけにいたずらに台無しにした所業は、罪深いーーとても反感を買いそうな文章である。

 さて、私がここを訪れたときは、学芸員による案内を受けた。新美南吉は安城市の女学校で教師をやっていたのだが、その学芸員の説明によると、自分のクラスで一人特別好きな子がいたらしい。学芸員はさらりとウケを狙うように言っていたが、教員の多発する不祥事を鑑みると、今も昔も問題はそう変わらないと断ぜざるを得ない。南吉が担任したクラスの集合写真の前で、学芸員が「南吉の視線の先を見てください。ほら、○○さんを見つめているのがわかります」と言って大爆笑をとっていた。集合写真の撮影でも見つめてしまうほど熱烈だったらしい。ということにみんなウケていたのに、現代の教師の不祥事には断固として批判するのはなぜなのでしょう(もちろん断固として批判すべきであるという観点で言っている)。ちなみに、これはその学芸員の鉄板ネタらしく、その後の館内ツアーでも、同じ写真で同じことを言い、同じように大爆笑をとっていた。これがプロか!? と思った。

 新美南吉の著作には他に、有名どころで『てぶくろをかいに』という作品がある。私はうだつがあがらずケツ拭く役にも立たないことで有名な国文学科出身なのだが、ゼミの中に、この『てぶくろをかいに』で卒論を書いた者がいた。雪の降る日にきつねの子供が母親のおつかいで街まで手袋を買いに行くという話なのだが、雪が降って寒いので、小狐が母親に「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする」と訴える場面がある。ゼミ発表のとき、私の隣に座っていた友人が発表者に対して「ちんちんってなんですか?」と真面目な顔で質問した。あきれたように笑う発表者に対して友人は続けざまに「冷たいなら、普通『じんじん』ですよね? ちんちんって何ですか?」とたたみかけるように言った。動向をうかがっていたゼミの先生はそれを聞いて発表者に対して「で、なんなの?」と追い討ちをかけるように質問を重ねた。かくして「ちんちんとは何なのか?」という議題がゼミ発表の場に正式に挙がったのである。

 四年制大学の「ゼミ」というれっきとした研究の場で、「ちんちんとはなんなのか?」ということを真剣に検討する国文学科という学部は、本当に世の中に全く貢献できない学部だと思った。

 余談だが、「ちんちんとは何ですか?」と質問した友人が、今度結婚する。その結婚式の余興を私は任されているので、どうにかして結婚式に「ちんちん」という言葉を挿入したいと企んでいる。実に楽しみである。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です