S・A・G・A 佐賀〜
【ジャパンエキスポ佐賀’96】は、1996年の7月19日から10月13日までの会期で開催された、佐賀県の地方博である。来場者数は見込みの倍以上となり、地方博としては成功した部類に入るかもしれない(そもそもの見込み数が全ての経費をペイしようとした試算であるようにはとても思えないので、奥歯に物が詰まった言い方をしている)。
この博覧会のためだけの臨時駅を作ったり、鳥栖フューチャーズというJFL所属のサッカーチーム(サガン鳥栖にJFL参戦の権利を譲ったチーム)の胸スポンサーとなったり、奇抜な宣伝戦略を立てたり(後述)と、地方博マニアの目から見るといろいろと面白い企画を立てた一風変わった地方博であったといえる。
ちなみに、当時のスタッフが後になって綴ったブログが残っている。
http://blog.livedoor.jp/yamadataro95/ (思い起こせば世界炎博)
記念メダルのことや、後述するミステリー小説のことにも言及されていて、本記事を執筆する際に大いに参考にさせていただいた。
キャッチフレーズの「燃えて未来」が、『翔んで埼玉』並の趣を醸し出しているよね!
ミステリーで博覧会を盛り上げようという奇策
この地方博における特筆すべき異色な試みとして、「ミステリー小説が出版された」というものがある。
恐らくは「人気作家に佐賀が舞台のミステリー小説を書いてもらって、博覧会を盛り上げよう」という意図だったと思われる(超ストレートな推理)。宣伝の手法として「ミステリー小説」という奇策を思い付き、果ては実現までさせた担当者は皮肉ではなく仕事ができる人であると思う(by社畜)。企画担当者達がこの博覧会のことを真面目に考えていたのなら恐らく反対も相当あったと思うのだが(行政が絡んでいるし)、それでもミステリー作家達に話を通して実現までこぎつけた実行力は相当なものではないだろうかと、我が身の仕事ぶりを省みて思わずにはいられない。
そんなこの企画の担当者の手にかかれば、「博覧会」と書いて「ミステリー」と読ませるゴリ押しなど、赤子の手をひねることよりも簡単なことであろう。「本気」と書いて「マジ」、「好敵手」と書いて「とも」と読ませる文化はあるが、「博覧会」を「ミステリー」と読ませる発想は、およそ凡人には思う至ることすらできない遥かなる高みである。もちろん褒めている。
ただ一点、そんな豪腕な担当者にも誤算があったとすれば
すげーつまらない
ということであっただろう。
びっくりするほどつまらないのである。しかしそれは、企画担当者のせいでは決してない。そこは、担当者の力の及ばないところである。
非常に酷なことをいえば、この企画で白羽の矢が立った三名の作家のせいであるといえる(ファンからタコ殴りに遭いそうな一文)。しかしながら、読んだ印象としては「佐賀が舞台」という条件が非常に重荷となっていた印象がある。面白くしようとしたってできなかったよ! というのが正直なところかもしれない。
劇中で唐突になされる佐賀の街並みや歴史の解説。県境近くで起こった事件では、長崎側で刺されたけれどどうしても佐賀で死にたくて最後の力を振り絞って県境を越えたという被害者の執念。その辺に力を込めて書かれているのだが、県外の人間としてはどうでもいい感が拭えぬままどの話も終了してしまうのである。事件の真相とかタネ明かしとかよりも、有田焼の方が大切なのである。
佐賀を舞台に、面白いミステリーを書くというのがそもそも無理ゲーであったのかもしれない。ということは、それはもう佐賀のせいなのかもしれない。
しかしよく考えてみてほしい。「ミステリーの舞台としてつまらない」ということは、イコール「殺人事件が似つかわしくない」ということである。つまり、佐賀は平和がすごく似合う県だということになる。それはとても素晴らしいことである。東京のように殺伐とした冷たい街ではないのである。つまり、これは逆説的に佐賀はよいところであるというPRを成し得ているといえるのかもしれない。そこまで考えていたのなら、これはもう、企画担当者の一人勝ちである。
というか、そもそもこのミステリー小説を「面白くしよう」という意図がまったく感じられない。というのも、この本の帯には、
犯人がもう書いてある
という、ミステリーにおける最大の御法度を犯しているのである。夫が死んだなら妻、妻が死んだなら夫が犯人であることを読む前から教えてくれるミステリー初心者に対する親切設計となっている。ただ、三話目の「迷路」だけは実は夫が犯人ではなかったのだが(妻が死んだ)、
犯人ではないが「実は夫も妻を殺そうとしていた」という最後に明かされるどんでん返しを帯の裏面にて暴露してしまっているので、やはり「いや、やりたいことは謎解きとかのそういうドキドキとかじゃないんすよ」という担当者からの内なるメッセージを読み取らずにはいられない。ミステリー小説でありながら、売り出す側はどうしても謎解きをさせたくないという執念すら感じる博覧会(と書いて「ミステリー」と読む)。
佐賀は平和こそ似合う県なのである。
余談だが、佐賀県唯一の記念メダルスポット【からつ城】は非常に素晴らしいお城であったことを付け加えておく。復刻城は基本的に好きではないのだが、ここはそんな私も楽しく満喫したお城であった。これくらいエンターテイメントに振り切ってくれると、再建城も楽しくなるね!
この本に対する書評は、別ブログにておこなっております。言っていることはほぼ同じですが〜↓
https://ameblo.jp/disukeyumi/entry-12499919352.html
記念メダルについて
セラミーというマスコットキャラが描かれた掲載メダルの他にも、博覧会ロゴがおもて面に描かれた金メダルもあるようである。裏面の「炎」の字が「森」のように「焱」という異体字になっているのがミソである。地方博の未来は大炎上ということを暗示しているんですかね(キャッチフレーズが「燃えて未来」だし)。
セラミーは地方博のマスコット(今でいうゆるキャラ?)の中ではかなり無難なデザインであるといえる。誰もが「炎の体育会TV」のロゴをまず思い出すと思うのだが、比べてみると全然違うので、気になる人は自分で検索してみて〜
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