邪道【第27回国民体育大会 太陽国体 1972年】 記念メダル

第27回国民体育大会太陽国体記念メダル

桜島が噴火で祝福した国体。いや、マジでそう書いてある。

 【太陽国体】とは、1972年に開催された国体の愛称で、この記念メダルに関していえば裏面に「KAGOSHIMA」とあるので夏季と秋季の大会の際のものだと思われる。ちなみに冬季は栃木と鳥取で開催された。この「複数回に分けられて実施された」とか「『栃木』と『鳥取』で開催って全然場所違うやん」とかいうところが、現在の国体とだいぶ感覚の違うところである。現在では「本大会」が秋に行われるのが基本で、冬にしか実施できないスキー等といった競技を「冬季大会」として冬に行なっている。昔は春以外の一年中国体をやっているかのようであったのである。

 国体で度々話題となる「開催県が必ず優勝する問題」はこのときはもちろん健在で、というかまさに全盛期であった。ということで、総合優勝、男子優勝(天皇杯)、女子優勝(皇后杯)全てが鹿児島県であった。「開催県が必ず優勝する問題」では、実は女子優勝だけは他県が獲ることもままあるのだが、この年は鹿児島県が完全優勝を飾っている。やりすぎ感満載である。ちなみにこの大会の特徴としては、沖縄が本土復帰し初めて県旗を掲げて入場したことと、桜島が噴火で祝砲をあげたことだとネット上の公式記録にまるで見てきたかのように記されている。桜島はなんて気の利くやつなんだ。

 開催県が優勝するカラクリは、簡単にいえば「強豪選手を開催県に住民票を移させる」である。そのため、練習拠点を始め、なんなら事実上の住まいすら開催県にない選手も多く、社会問題化した。ただ、社会問題化といっても、そもそも「国体への関心度」は自治体が熱を上げるほどは世間一般的には高くなく、そんなに盛り上がらなかった印象である。関心が高くないからこそ、長い間この問題が放置されてきたともいえるが。

 ということで、最近では開催県以外の自治体が総合優勝することも珍しくなくなってきた。というかガチンコ勝負をするとなれば、結局「東京都」が強く、ここ最近は東京都が男女共優勝するか、男子だけは開催県が意地で優勝するが女子はやっぱり東京都というパターンとなっている。まあ現実はそんなもんだよね〜。

 スポーツに限らずどの分野の話であっても、優秀な人材は首都に集まるものである。全国学力調査のテストだって、公立学校のみを対象に調査するから地方の県が一位を獲るが、首都圏の本当に優秀な学生は東京の私立の中高一貫校に通うものなので、その辺を調査に含めれば恐らく東京がトップになるのではなかろうか(まあ本当のところはやってみないとわからないけどね〜)。

 自治体が国体の誘致に名乗りをあげたがるのは、開催にともなってインフラ整備をしたいという側面もかなりあるように見受けられる。特に昔は近代的なインフラがまだ整備されていなかったこともあり、町おこし的な意味合いを兼ねて力を入れていたように見える。そしてそれに伴い「金を掛けたんだから結果が欲しい」という意識に流れるのは当然といえば当然で、結果を求めるならば結果を出せる人材を確保するのが最も効率的であるといえる。そうして幽霊県民が出来上がるのであった。

 現在のように不正が発覚すれば手に負えないくらいネットで叩かれ、ネットで叩かれることを無視できないほどのネット社会であれば、もっと早くこの問題は決着していただろう。しかし、SNS社会となり個人の誰もが超速で情報発信できる世の中になったのはここ最近のことであり、一昔前までは「特に関心のない大会でなんかやってらー」くらいにしか思われていなかった。このことから、現在の流れは当然正しい方向へのあるべき姿へと国体を進めさせたと心底思う一方で、「自治体にとっては開催の旨味が減ったかも」という懸念もあり、国体は衰退していくのではないかと思ったりする。スポーツイベントにインフラ整備を始めとしたいろいろな思惑を重ねること自体が間違いであったといえばそれまでだが、各自治体が熱をあげていたのは「そういうもの」があったからだという一面もあるわけで、「スポーツの祭典であるオリンピック開催に経済効果なんて期待するな」という誰も幸せにならない正論に近いものがある。

 何が正しいやり方なんでしょうね?(唐突な放り出し)

記念メダルについて

 おもて面に描かれているランナー?は、お笑い芸人が極端に体操選手のマネをしたときの姿に似ている。こんなランニングシャツと髪型をした選手が昔は本当にいたのだろうか? 今の感覚からしたら、だいぶかっこ悪いのだが。しかし30年後には、現在の「アンダーアーマー」をはじめとしたコンプレッションシャツを着こなすようなスタイルも「ぷぷっ……」と芸人にマネされる面白い格好として見られるようになるのだろうか。「昔はぴちぴちのシャツ着て走ってたんだってーまじウケるー」と。

 70年代の茶平メダルは、実は意外と人物画が多い。で、得てしてこんな感じの何ともいえない「可愛くも美しくもカッコ良くもない姿」で描かれている。茶平メダルに限らず、80年代くらいまで、特定の人物を描かない人物画といえばこんな感じの描かれ方をしていたようにも思うが、記憶はもはや定かではない。時代は今や女の子なら萌え画、男なら胸キュン画である。これもまた30年後には「なんか昔はやたらと女の目をデカく描いててウケるー」と言われる日が来るのだろうか。

 記念メダルには、時代の価値観の変化もまた静かに描かれるのである。




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