邪道【オリックスブルーウェーブ リーグ優勝1996】 記念メダル

イチローがいたあの頃の日本

 1996年のオリックスブルーウェーブは、日本史上最強の1番バッターイチローを擁し、昨年の「リーグ優勝」からランクアップし、見事に日本一に輝いた年であった。この頃のイチローは、成績的には数多の日本記録をバンバン塗り替え始めるとんでもないスーパースターの始まりといった頃で、首位打者やら盗塁王やら打点王やらを獲得するのが当たり前になってきて、さらにはシーズン200本安打がニュース速報で流されるなど(この時のニュース速報が流れた情景をいまでもよく覚えている)、日本国内はイチローかアムラーかというほどのお祭り騒ぎであった。が、イチローの選手としての輝きを俯瞰して見れば、この頃はピークを迎える前の富士山五合目といったあたりで、頂上はまだまだその先で登山素人が登ったらまだ6時間くらいはかかったであろう遥かなる先にあったのだから恐ろしすぎる話である(五合目ですらなかったかもしれない)。イチローにとって日本記録の数々は、文字通り通過点にしか過ぎなかったわけである。

 事実、イチローのインタビューによると、95年から99年の4月11日まで、スランプであったらしい。4月11日の試合で放った遊ゴロからスランプを脱したという本人の談があるのだが、何をいっているのか我々のような凡人には到底理解できない話でしかない。まこと神のイタズラとしか思えないが、天才にとっては日本記録更新という峠もスランプの最中に達成しうる低い頂であったらしい。

 ちなみにイチローは、「オリックス・ブルーウェーブ」に在籍した経験をもつ選手としては最後の選手となった(現在は近鉄と合併したためオリックス・バッファローズなので)。

 イチローの快進撃はこの日本一以後も続いていくが、オリックスとしては現在に至るまでの低迷が続くこととなる。クライマックスシリーズのファイナルステージにさえ進出したことがないのは、12球団中オリックスが唯一の球団となっている。

 イチローのイケイケぶりは2000年のメジャーへの移籍以後も続くわけだから、いかに「良い選手がいるだけではダメ」かということを世の中に教えてくれる事案である(この点はマリナーズも一緒だけどね……)。組織って難しいよね……

 この年のオリックスの日本一はおぼろげながらも記憶にある。しかしその大半はやはり「イチロー」が中心で、イチローの活躍とともに語られたイチローの過去の様々なエピソードは記憶にあるものの、どんな試合していたかとか、他に誰がいたかとかは全然記憶にない。明快に記憶にあるのは「振り子打法を皆が真似していた」という日本における一現象のみである。

 それくらい、プロ野球はイチロー一色であった。それはひいては、「日本において初めてパ・リーグが注目された」という事象であったといっても過言ではない(過言かもしれない←どっちやねん)。

イチローか、アムラーか 

 日本における1996年は、イチローもさることながら小室哲哉と安室奈美恵の全盛期でもあった。同時に世の中はいわゆる「女子高生ブーム」であり、ちまたにはミニスカの女性が溢れかえっていた時代である。長らく続く不況がいつまでも語られ、「長引いているならそれは不況ではなく、好景気が終わって普通に戻っただけなのではないか?」と、まだ働いたこともない私は訳知り顔で大人に口を出す嫌なガキであった。

 今振り返ると、不況だ不況だと喘ぎつつ、世の中は浮かれていたように思われる。小室哲哉がCDのミリオンヒットを連発するなんてニュースが流れるのは、よほど景気の良い話であることよ。まあ当時のサラリーマン達は身を切るような思いをしていたのかもしれないが。

 インターネットの黎明期もちょうどこの頃で、私がパソコンという名のおもちゃを手に入れたのもたぶんこの頃である。まったくの余談だが、これ以前にも私は兄のパソコンを使ってBASICというプログラミングで多少なりとも遊んでいたのだが(専門雑誌を見ながら簡単なゲームを作る程度)、今現在まったくプログラミングなんかできない。基本情報技術者試験というエンジニア入門のIT資格を保有しているが、現在エンジニアの世界で主に使用されている「Python」とか「Ruby」とか「Rails」とかいったプログラミングなんぞまったくできないし、なんならHTMLだってよくわからない(プログラミングですらないけど)。さらには、文科省が学習指導要領においてプログラミング学習導入の目的としてその獲得を謳った「プログラミング的思考」なる力は一ミリもついてはいないと断言できる。というか「プログラミング的思考」てなんやねん。「論理的思考」(ロジカルシンキング)と何が違うの?

 話がだいーーーーぶ逸れたが、何が言いたいかというとパソコンというものの使用方法が根底から変わったのもこの頃だということである。昔はパソコンといったら「プログラミングをするため」のものだったのである。それが、インターネットをするためのものに変わったのである。それによって何が起きたかといえば、パソコンが一般家庭に普及し、インターネットを通した犯罪もまた爆発的に増えたという時代である。前述の「女子高生ブーム」とこの頃爆発的に問題となった「少女買春問題」は切っても切り離せない事柄であり、ネットを介して行われた買春事件が数多くあり、ネットを通した出会いによる印象をかなり悪くした。

 以前まで私は会社のいわゆる「情報システム部門」に所属していたのでネットリテラシー的な研修をすることがあったのだが、私と同年代かそれより上の世代と、20代の若手とでは、「ネットでの出会い」に関してかなり意識の違いがあることを感じた。私のような30代半ば以降の人間にとっては上記のようなインターネット黎明期に起こった数々の事件が記憶にあるので「ネットを通じた出会い」=「危険・怪しい」という等式がかなり根強く植えつけられているのだが、SNS世代とも呼ばれる現在の20代の若者たちにとっては、ネットで知り合った相手と現実世界でも会うなんてことは日常的な出来事である。そこにはもちろんフェイスブックの台頭をはじめとしたSNSの社会への普及があり、ネットの世界がかつてよりもさらに身近なものとなっている証左でもある。

 現代において、たとえば「共通の趣味をもつネットのコミュニティの人とオフ会をする」なんてことは当たり前なのである。そこには良いも悪いもなく「そういうもの」として受け入れていかなければならず、その前提に立って「じゃあどうすれば身を守れるか」を考えなきゃいけないんですよ〜と説明するのだが、大抵私より年齢が上の方々には渋い顔をされる。パソコンやスマホに苦手意識がある方々はどうしても「そんなものを利用するから犯罪に巻き込まれるんだ」という考えから抜け出せない傾向にある。しかしそれは「事故を起こしたくなければクルマなんか運転しなければ良い」と言っているのと現代においてはもはや同じなんだといっても、そこは理屈ではないのであった。

 1996年——20年以上という長い歳月を経た現在でも、当時の価値観から抜け出せない、という人間の意識の問題を実感するようになったのは、私が年老いた何よりの証拠であろう。コンピュータに関しては年齢の割にはわりと時代についていっている方だとは思うが、そのほかのことは、このようにしてい「ジジくさい」と言われていくのだろう。たまーにクルマのラジオで流される小室哲哉の曲を「変わらぬ名曲だな〜」とか思っちゃうのは、母親がいつまでたっても山口百恵のベストアルバムを聴いているのと恐らく同じであると思われる。

 で。

 当時アムラーだった女性達は、当時のことを振り返る時、何を思い出すのだろうか。すでにアムラーファッションをする女性というのは当然おらず、「アムラー」という言葉も当時を懐かしむためのものでしかない。そういう意味では、今なお上記のような「当時の感覚から抜け出せない」という中高年が多い中、アムラー達はいち早く「一抜け」できた人たちであるという見方もできる。ファッションという文化の性質なのかもしれないが、個人的には、ITの世界はファッション並に移り変わりの激しい世界だと考えているので、「流行に乗って、流行が終わったら潔く捨てる」という今も昔も変わらぬ流行に敏感な若い女性たちの感覚を見習って欲しいと思わずにはいられない。

 あるいは、もしかしたら、それができなくなったときが「若さ」を失ったときなのかもしれない。

 ただ、当の安室奈美恵本人は、まるで不老不死の秘宝を得ていたかのように変わらぬ魅力を発信しつづけ、頂点に立ってご来光のような存在のまま引退をするという「変わらぬ存在」であったというのは、げに世の中のおもしろきかな。

記念メダルについて

 このメダルは「リーグ優勝」を記念したものであるが、慣例からいくと「日本一」になるとまた別のメダルが製作されることが多いのだが、存在するのだろうか。ちなみに前年の95年もリーグ優勝をしており、そのメダルは存在することが確認されている。

 デザインとしては、チームのマスコットキャラを敢えて裏面に配置したことは珍しい点だと思われる。そのためおもて面は文字だけのデザインで勝負することとなり、私はこういうデザインが好きなのだが、一般的にはどうなんですかね? ちなみに刻印は、優勝した日が初めから刻まれているパータンである。

 余談だが、プロ野球優勝メダルは、球団の人気度によって入手難易度が如実に変わってくるのが興味深い。巨人、阪神、中日あたりはヤフオク等で定期的によく見かけるのだが、その他の球団は出品されたらレアであり、その時になって初めて存在が確認されるものも少なくない。そのため値段も競り上がりとても手出しできなくなるので、私が現在所有しているプロ野球優勝メダルシリーズは、比較的よく見かけるものであるといえる。その中では、このメダルは割と珍しい方である。




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