邪道【JRセントラルタワーズ】 記念メダル

どこの夜景か、誰と見る夜景か

 【JRセントラルタワーズ】は、バリバリで現存しているものの、その「展望台」は2005年に閉鎖されたため、それに伴ってそこで販売されていたこの記念メダルも消え去る運命となった。【JRセントラルタワーズ】は2000年開業で、展望台の閉鎖は2005年であるので、なかなか早い経営判断であるという印象。こういうところって、不採算でもぐずぐずと経営が続きがちだし。というか、休日にはそこそこ人が集まっていた印象があるし。不採算部門であったかもしれないが、それなりに惜しまれつつ閉鎖された記憶がある。

 ちなみにこの「展望台」には、いまではある意味では無料で行くことができる。展望フロアにエステやらバーやらカフェやらを開業し、そのお客に眼下の景色を提供するというスタイルに変更された。この中でカフェはこういう場所にある割には庶民的な値段設定であり、かつ、実は意外と知られておらず、勝負デートの必殺技として機能する穴場スポットである。

 【JR札幌タワー】と同じような立場にありながら、経営判断が分かれた形である。より商業的なのがやはり名古屋なのか。

 ここは実はかつてギネスブックに掲載されていた。項目としては「世界一大規模な駅ビル」として載っていたのだが、ある日突然ギネス側から「ここは『駅ビル』じゃねえ。複合ビルだ!」という三行半(よりも短い)を突きつけられ、記録が抹消された。他に記録を更新した施設が誕生したわけではなく、認められていたのに突然取り消されたーー告白してOKしたクセに突然フってきたイケズな行為をされたのである。ちなみに現在では【あべのハルカス】が「世界一高い駅ビル」として申請するかどうかと言われているらしいが、もしこれが申請され、そしてこれがもし通ったら「おまえ何やねん!」となること間違いなしである。駅とくっついているだけでは駅ビルと見なされないならば、駅ビルの定義とは一体なんぞや。

 さて、私はこの場所かまだ運営されているときに、一度だけ訪れたことがある。大学のときに付き合っていた女性と和歌山に行った帰りに立ち寄った。謎過ぎる行程。

 そのとき感じたことは、山の夜景の方がよいという身も蓋もない感想。その人とはそれ以前に岐阜の金華山(【金華山ロープウェイ】でおなじみ)にもパノラマの夜景を見に行っていたので、そっちの方がよかったな、という素直なことを思った当時若かった私。しかしこの感想に至るにはもっと複雑な要因があると思われる。

 というのも当時は20歳になるかならないかくらいの若造であったので、例えば「展望フロアにあったおしゃれなバーで一杯」なんて洒落たことができる経済力も甲斐性もなかったのである。大人になってようやく気がつくことだが、「高層ビルの夜景を見に行くのは夜景を見ることが目的ではない」わけで、そこのところをさっぱり理解していなかった当時の私は、「金華山ならタダなのに、ここは1000円近く払ってこれなのか」みたいなことを思った。

 男として、なんとレベルの低かったことか。

 もちろん、当時の私は1食100円以下で過ごすことを使命とする苦学生であったので、腹が膨れないことに1000円を支払うのは清水の舞台どころかドバイの超高層ビルから飛び降りるほどの覚悟が必要なことであった。

↓ドバイのビルから飛び降りた人

 だからもちろん、「夜景を見ることはデートの一部でしかない」という発想は全くないし、そもそも和歌山からの帰りであったしで、単純に夜景の良し悪しを図るだけの貧しさであったのである。

 そう、夜景とは、デートを良いものにするためのスパイスであって、メインディッシュではないのである(知ったような口調)。

 以上のことから、私は今にして思えば恥ずかしい価値判断を【JRセントラルタワーズ】に対してしていたといえる。名古屋の夜景が全然美しいものでないことは事実であっても、そのことは責められるべきことではなかったのである(何気にひどい言い草)。

 ここまで語っておいてナンだが、【JRセントラルタワーズ】から見た夜景はそれほど感動的なものではなかったが、二人で夜景を見てはしゃいだのは最高に楽しかった思い出である。

 要は、どこに行くかではなく、誰と行くかだよねというミもフタもない結論。はい。

 




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