【吉岡海底駅】は、【竜飛海底駅】と対を成す青函トンネル内に設置された駅であった。「あった」というのは、現在駅として機能していないからである。北海道新幹線の開通に伴いその役目を終え、現在では北海道新幹線用の非常時避難場所として「定点」という名で生き続けている。【竜飛海底駅】が青森側に属していたのに対し、【吉岡海底駅】は北海道側に属する駅であった。ということで、「北海道最南端の駅」ということであったらしい。海底にあったけど。
記念メダルに関していえば、この【吉岡海底駅】は【竜飛海底駅】よりも深いところに位置していたので、「世界一深い場所にある鉄道駅」にある「世界一深い場所にある記念メダル販売機」であったといえる。
元々、一般的な駅とは違い「駅見学整理券」なるものを持つ人だけが降りられる見学用の特別な駅であった。こういう場所に行っておかなかったことは、往々にして人生において悔やまれる事柄となる。私はてっちゃんではないが、記念メダラーとしては「その場所がもはや存在しない記念メダル」というのにひとかたならぬ思い入れがある。イベント等の終了で手に入らなくなった記念メダルとはまた一味違う哀愁を身にまとう記念メダルなのである。「確かにかつその場所が存在したことを示す唯一の痕跡」的な。唯一ではないことはもちろんわかっているが。
【吉岡海底駅】は『ドラえもん』とコラボして、「ドラえもん海底列車」という特急の運行、「ドラえもん海底ワールド」という駅での企画展の展示が【吉岡海底駅】構内でなされたらしい。驚くべきはその「コラボ期間」で、1988年から2006年の実に8年間もの長き期間コラボし続けたらしい。ドラえもん側の担当者がコラボしたのを忘れて放置していたんじゃないかと疑うくらい、長い。
個人の方のブログでその様子を収めた写真を簡単に見られるのでその詳細は省くが、海底内でもはやお祭り騒ぎのような展示であった。「ここ、駅なの?」とビックリするくらいドラえもん尽くしのワールドで、「ドラえもん海底ワールド」の名に恥じない様相である。
イベントに行ってみたかった、という気持ちは別に湧かないのだが、このイベントに行ってメダルを購入したかったという複雑な思いは湧き出づる記念メダラーである。ちなみに「ドラえもん海底列車」の方ではドラえもんとのび太による車内アナウンスが放送されるというこれだけでもなかなかの凝りようなのだが、さらに感心するのは、2005年のドラえもんの声優陣交代に際して、車内アナウンスの声もきちんと交代したという点である。ドラえもん側スタッフ忘れてた説がこれで否定される。
記念メダルの世界は諸行無常という世の理を体現する世界である。新たなメダルが生み出される一方で、常に消滅してゆく記念メダルの存在があることが、全国の記念メダラーに「永遠はない」ということを教えてくれる。
二度といけない場所にあった二度と手に入らない記念メダルは、その役目を終えたかのように私のもとへやってきて、そして特に何を語るでもなく、ただ静かに存在している。
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