【販売場所】
@船内5階ゲームコーナー
備考:3日間乗っていると、いつの日付を刻むか迷うのであった。
風呂入ってビール飲みます! とつぶやいたら乗船券をもらった件
2021年8月、Twitterの太平洋フェリー公式アカウントにて、【いしかり】就航10周年を記念して、「#太平洋フェリーのすすめ投稿キャンペーン」という企画が立ち上がりまして。
そこで、約9年前に乗船した時に「風呂入ってビールを飲んだだけの2泊3日」という自堕落の究極進化系な時間を過ごした思い出をつぶやいてみたら、なんとキャンペーンに見事当選したのであった。
生きてて良かった( ;∀;)
と数年ぶりに思った。その日ボクは飛べる気がしたんだ……(特に意味のない発言)
お金を払ってでももう一度乗りたいと思っていたものに招待されるのだから、嬉しさを通り越してギザモンモスうれピー。しょこたんとのりピーが混ざってしまうくらい嬉しい(よくわからない世代感)。
しかも「特等室」ですよ、奥さん! 自分だったら絶対ケチって買わないような部屋にタダで泊まれるなんて……(9年前はカプセルホテル的なB寝台を利用した。全然不満なかったけど)。
しかし一方で、「往復ペアチケット」という文言が気になりもしたのだった。
ペアって何? どうしてそんな余計な気を遣うの? その気遣いが逆に人を傷つけることだってあるんだよ?(めんどくさい被害妄想)。
——などと余計な心配を理不尽なほどにしていたら、なんのことはなく、「往復ペアチケット」とは片道チケット×4枚であった。
4回乗れるやん♪( ´▽`)
ということは、チケットの枚数的には、3隻の太平洋フェリー所有船全てに乗船できるということになる。むしろ一枚余る(おや、二人で乗ればいいじゃないかだって? ファッキンジャップ!)。
ただ「利用上の注意事項」を読むと、「B・C期間は利用不可」なので、夏休み期間や年末年始等は利用できないということになる。つまりそれは、絵に描いたような一般的なサラリーマン生活を送る私には「往復での利用は実質的に不可能」だということを意味する。なんてったって片道だけで2泊3日の旅ですからな……(名古屋—苫小牧間の場合)
ということで、必然的に旅の計画としては「行きにフェリー、帰りに飛行機」か「行きに飛行機、帰りにフェリー」かの2択になる。さらに細かいことをいえば、前者は「普通の土日休みでOK」で、後者は「3連休である必要がある」という条件となる。なぜなら、フェリーの出航は名古屋発、苫小牧発、いずれの場合も19時だからである。つまり、前者は「仕事終わりに向かえばOK」で、後者は「北海道まで移動するための日が1日必要」という話となる。似たような行程でも、実は難易度に差があるのであった。
さらに、太平洋フェリーの全てを制覇するには「仙台—苫小牧」間のみ運航する【きたかみ】の存在もあり、こちらに乗ろうと思うとさらに複雑な条件をクリアしなければならない。
うむ。
オラ、わくわくすっぞ(某サイヤ人風に)
いやー、嬉しい悲鳴とはこのこと也。
大人になって「突発的なラッキーなこと」というのにほとんど巡り合わなくなって久しい。突然お小遣いを貰えたりずっと行きたかったところに連れて行って貰えたりすることもなく、いつの間にか、欲しいものがあれば全て自分の力で手に入れることが前提となっていた。それはそれで良いことであるし、ある意味では自分の願いをより叶えやすくなっているとも言えるわけだが、「はっぴ〜」と頭のてっぺんから足の先まで思えるようなこともほとんどなくなってしまったと言ってよい。それほどまでに幸せな気持ちになるときというのは、どちらかというと、自分ではなく、他の誰か、自分の大切な人に喜んでもらえたときではないだろうか。いや、マジで。
これほどまでの幸せな気持ちは、本当に久しぶりに味わった。だからこれからは、あらゆることに感謝しながら生きていこう。仕事を頑張って、いろいろな人に貢献するという形で私の周りの世界に恩返ししていこう——そう心に誓い、当選から4ヶ月が過ぎた3月中旬、ついに一発目の北海道への旅を決行したのだった。
翌月の新年度から突如として降りかかった圧倒的なまでの仕事量で地獄を見ることになるとはこのときは露とも知らず、キラキラした気持ちを胸いっぱいに抱えたまま……
いや、もうまじダメかもしれん。ほんと、無理(2022年4月現在)
船旅の夜に
出発当日は時間休を使って仕事を早退きし、名古屋港フェリーターミナル直通バスが運行されている名古屋駅の名鉄バスセンターへと向かった。このバスは太平洋フェリーの出航日のみ、17:20発の1便だけ運行される特殊なバスで、乗り遅れたらそれは終わりを意味する。普段バスとか全然乗らないので、実は一番緊張したのはこのバスに時間通りに乗れるか否かであった。結果、1時間前にバスターミナルに到着し時間を持て余すという予想通りのオチ。ドキドキするより100倍マシであるが。
ちなみにこのバスは行きだけの運行であり、帰り即ち「名古屋港—名古屋駅」間の運行は何故か無い。つまり、「苫小牧—名古屋」間に乗船した場合は、名古屋港フェリーターミナルから歩いて「あおなみ線」の最寄駅まで行かなければならないのである。なぜだ〜。
そんなこんなで、バスに揺られること1時間弱。無事フェリーターミナルに到着したのであった。
前回は自家用車に乗ってクルマごと乗船したため、実はターミナルの乗船通路を歩くのは初めてであった。なんかそれだけでワクワクした。田舎者がお上りさんになる気持ちが痛いほどわかるくらい、私の気持ちは過去最大級に浮ついていた。このとき怪しいマルチ商法の話を持ちかけられていたとしたらホイホイついて行ってしまったことだろう。勧誘する人は、実はフェリーターミナルとか穴場かもしれない(みんな気をつけよ!)。
特別優待券の使用であっても特に滞ることなく、無事乗船手続きを終え、いざ船内へと向かう。
こうして、私の北海道への旅が始まったのだった。
ここで一つ、シビアな話を、自分への戒めも込め、記録として残す。
実はこの日は、前日の夜に東北地方で震度6強の地震があったときである。フェリーは運行されるのか、運行されるとしても乗って良いものかどうか——といったことがぐるぐるぐるぐると1日中頭の中を駆け巡っていた。結果的には行きたい欲望が上回ったので来てしまったというのが本当のところで、結論的にはまったくもって問題のない船旅であったのだが、こういった状況の時により安全な選択肢を選ぶという行為は、思いのほか難しいということを痛感した。「より安全な選択肢」というのは、この場合はもちろん「フェリーに乗らない」ということである。フェリーに乗らなければ当然、東北地方の海上で地震と津波の被害を受ける可能性はゼロになる。ただそうと分かっていても、損得勘定が絡むと己の願望を理屈を超えて正当化する方向に簡単に気持ちが動く。これがいわゆる正常性バイアスか⁉︎ というのを身をもって体感した。
例えば、バスセンターで待っていると、続々と同じバスに乗る人が集まって来た。ここで真っ先に思い浮かんだのが「みんなも来たから、大丈夫だな」である。フェリーに乗る予定の人が予定通りに集まろうがそれは大丈夫であるという根拠には1ミリもならないのだが、実際には、「みんなも来たから大丈夫だ」と、そう思って安心した。もちろん乗ることに決めた最大の根拠は、太平洋フェリーのホームページに表示されていた”本日は通常運行いたしております”の文字を見て「太平洋フェリーが大丈夫だと言っているのだから、大丈夫だろう」と思ったことによるのだが、それだって頭の片隅では「緊急事態のせいで更新し忘れているだけなのでは……?」という疑念が常に横たわっていた。
私の思考の全てが、いろいろな意味での「行きたい」という願望のもとで、正常性バイアスのもと強制的に都合よく解釈され続けた。結果論的には全て問題ない快適な船旅となり楽しい思い出がまた一つ己の内に刻まれたわけであるが、さて、果たして「かつてない問題に直面する事態」が暗闇の中で首を長くして待ち構えているような状況であったとしても、果たして正しい判断ができたどうかは甚だ疑問である。いかなるときにも私が真に考えていたことは、例えば「キャンセル料100%になってしまった宿泊2日前のホテル代」、例えば「格安航空だからそもそもキャンセル料100%の帰りの飛行機代」といった、もう取り返しようのないもののことばかりだったというのが本音ではないだろうか。それを「みんなも来たから大丈夫だ」「通常運航だと言っているから大丈夫だ」という自分にとって都合の良い情報で上塗りすることで正当化していただけではないだろうか。
ピンチのときに、正常性バイアスに抗うことは、本当に難しいことであることを痛感した。
逃げることが正しい選択であると自分の経験から判断できるとき、それでも他の大勢が「逃げない。とどまる」と言ったとして、果たして自分は正しい選択ができるだろうか。もっともらしいことで反論されたとき、それでも自分の判断を信じて正しい決断ができるだろうか。もしくはそれとは反対に、自分が間違っていて他の人が正しいときに、自分の考えを修正して正しい選択を選べるだろうか。後のない、切羽詰まった状況の中で。
正直、まったく自信がない。はっきり言って、今の自分には到底不可能だろう。「何事もなかったとしたら損をする」という状況を避けることを優先する自分の姿がはっきりと見える。このときの自分が、正にそうであったように。
無事に帰ってきて、このようなしょーもないブログを書いている今だからこそ、改めてそのようなことを考えた。
何もすることがないという名の贅沢
人間とは不思議なもので、「より大きな幸せを知らなければ、今手に入る幸せで満足する」という仕組みになっている。このことをフェリーに例えると、「飛鳥Ⅱに乗らなければ、太平洋フェリーが俺にとっての豪華客船だ!」ということになるのは自明の理である(何が?)。
フェリー旅は、一般的には恐らくマイナー旅行に部類されると思われる。そのため、フェリー旅というものがきちんとイメージできる人は少数派であるだろう。フェリーといったらそれこそ「飛鳥Ⅱ」クラスの超豪華客船か、離島や半島同士の移動に使われるような高速フェリーのような船かの2局化されたようなイメージが世間一般には広まっており、だから「1万円前後で北海道に行けて、ホテルみたいな感じの場所だよ」と告げると驚かれることが多い。例えば、フェリー旅の話の流れから船内の写真を見せているにもかかわらず、写真を見た人が「泊まったホテル?」と聞き返してくる確率は経験上かなり高かった。それほど、フェリーという存在は多くの人に縁のない移動手段なのである。なんともったいないことか⁉︎
ひとことでいえば
インドア派のサンクチュアリ(聖域)
といえる。フィリー旅にハマるかどうかの一つの判断基準としては、「カフェで過ごす時間を楽しめる人間か否か」というのが挙げられる。もっと簡潔にいえば、「わざわざカフェに行って読書したり動画鑑賞したりするのは何故? 家でやればいいじゃん」と思っちゃうような人には、たぶん向かない時間の過ごし方だろう。
カフェ特有のあのゆったりした時間でゆったりとした過ごし方を楽しむ術を知っている人ならば、「フェリーに乗ること自体が旅」というフェリー旅の本質を理解して貰えるだろう。一方で、「コーヒーを飲むのに400円も掛ける気持ちが一切理解できない。コンビニの150円のコーヒーで十分おいしいじゃん」と思う人は、同じような値段で北海道に行くのに迷わずLCCを利用することだろう(それが悪いわけではまったくありませんが)。
何が言いたいかというと、「場所代」という考え方を自分の中で受け入れられている場合、フェリーという移動手段が大変価値のあるものになるのである。太平洋フェリーは、ゆったりできる場所を提供してくれるという点だけですでにその乗船代を完全にペイできているのに(何なら安すぎるくらいだ)、ついでに北海道まで連れて行ってくれるという付加価値までサービスしてくれる。そう、北海道までいくという移動手段の方がおまけなのである(暴論)。
私の今回のフェリー旅でいえば、最大の目的は実は勉強することであった。翌月に控えた国家試験「ネットワークスペシャリスト試験」に向けての最後の追い込みをしたいと考え、敢えてこの時期に乗船したのであった。「ホテルに缶詰で勉強」が「フェリーに缶詰で勉強」へとマイナーチェンジしたものであると考えていただければよい。しかもフェリーの場合、絶対に外に遊びに行けないというより強力な強制力をも発動するおまけ付きである。何ならスマホの電波も圏外だし。
そう、実は太平洋フェリーは追い込み勉強に最適な場所なのである。勉強に疲れたら即大浴場→リフレッシュ→次のお風呂を目指してまた勉強、という好循環が起こり、永遠に勉強していられるんじゃないかと思ったくらいである。自分で準備しなくてよくて足が伸ばせて好きな時に入れるお風呂、さいこー。何回入ったかもはや覚えていない。とにかく辛くなったら入ったし、辛くなくても入った。しずかちゃんよりも入った、たぶん。
太平洋フェリーさんには「受験生応援キャンペーン」みたいな企画を提案する次第である。マーケティングの仕方次第で結構ウケが良いと思うんだけどな〜マジで。まあ私は全然大丈夫なタチなのだが、船酔いする受験生が多発するかもしれないが。
特等室でタダで寝るのだ!
フェリーの旅は安くしようと思えばどんどん安くできるので、あまり乗らない人ほど費用を抑えるために格安プランで乗りがちである。例えば「寝台」と呼ばれる、いわゆる「カプセルホテル」のような造りの部屋がたいていのカーフェリーには用意されており、「大部屋・大人数で雑魚寝は嫌だけど、個室を取るほどの費用は掛けたくない」みたいなライトユーザー層の妥協点として利用されることが多い。実際、どんなプランで乗ろうが船内設備は良くも悪くも分け隔てなく利用できるので、大浴場を満喫し、ラウンジ等でテレビを見たりスマホをいじったりしてゆったりと酒を飲んで過ごすイメージならば、部屋の等級を下げれば下げるほど実はコスパが良くなるという一面がある。部屋では寝るだけと割り切っているなら尚更だ。
しかし、フェリーが好きだからこそ、一度は利用してみたい個室! 個室のベッドで寝て、自分だけのトイレで爽快に用を足し、荷物を放置しても安心して大浴場にひとっ風呂浴びに行けるのなら、それはもう「ホテル」である。ホテルのゆったり満喫プランに、北海道までの移動がついでについてくるというお得仕様となる。
だから個室を取ってフェリーに乗っても実は全然損だとは思わないのだが、それでも安く済むなら安く済ましてしまいたくなるのが貧乏人のSA・GA。自分のお金で乗船する分には、私が個室を予約することは永遠にないと思われる。絶世の美女と船旅ができるというなら余裕でスイートを予約するが、それは隕石が地球に衝突するのと同程度の確率でしか起こり得ない事象なのだった(思ったほど確率低く無い疑惑)。
個室を利用した感想としては、「快適」——だけど「太平洋フェリーならまあカプセルホテル形式でいいかな( ´ ▽ ` )」といった感じである。もちろん、これは良い意味で言っている。
例えば、【さんふらわあ きりしま】に乗船したときは共用スペースの狭さ、座席数の少なさに面食らってしまい、「個室がなければ快適に過ごせない。ていうか、パソコンも勉強もできない……」という絶望感にさいなまれた。乗船したら最後、常に座席の奪い合いで、持ち込んだ弁当を食べるのも一苦労であった。しかし太平洋フェリーの場合は余りある共用スペースでいくらでもパソコン、勉強、読書、タブレット端末で映画鑑賞ができるので、結果的に「個室で過ごす時間があまりない」という結果になった。せっかく乗船したからには、広い空間で海を見ながら過ごしたいじゃないですか(急な馴れ馴れしい口調)。
そうなると個室の最大のメリットは「周囲のいびきを気にせず寝られる」という点に尽きることになる。それはそれで非常に大きなポイントではあるが、正直、私はそういうことが全然大丈夫なタチなので、まあカプセルホテルでいいや( ・∇・)という感想なのであった。もちろん無料券での乗船なのでありがたくもう3回ほど個室を使わせていただきますが〜。
あと3回も乗れるという喜びがヤヴァイ。
船の上のご飯事情
フェリーの旅で気になるものの一つといえば「ご飯」であろう。特に太平洋フェリーの場合は2泊3日の長丁場となるので、食事の充実は人生における1日以上の時間の満足度を左右する重要な要素であるといえる。他にやることがない分、食事という行事が占めるウェートが大きいのである。
で。食事処としては、2パターンが用意されている。バイキング形式のレストランか、喫茶形式の売店かである。
「名古屋-苫小牧」間で利用する場合、朝昼晩と食べるなら都合計5回の食事を船上ですることになる。飲食物の持ち込みは全然オッケーなので、持ち込んだ物を食べるか、上記の店で食べるかの選択をすることとなるが、たとえ全ての食事をフェリー場のお店で済ますつもりでも、何かしらの飲食物の準備をしていた方が、より充実した船旅になるだろう。船の上でピザポテト食べたいじゃん。
船旅の満喫には、事前準備が思いのほか重要なのである。
私のおすすめプランとしては、
- 1日目 夜 持ち込んだコンビニ弁当とか(いつもより豪勢&いつもは買わないようなスイーツまでつけちゃったり)
- 2日目 朝 持ち込んだカップラーメン(背徳感に満ちた特別な朝。おススメは早朝の甲板デッキで食べる)
- 2日目 昼 喫茶コーナー「ヨットクラブ」で「まかないカレー」 or 朝からビールとおつまみで敢えて食べない
- 2日目 夜 レストラン「サントリーニ」で夜バイキング(1日の全てをここに照準を合わせ、死ぬほど食べよう!)
- 3日目 朝 喫茶コーナー「ヨットクラブ」でモーニング(個人的にはTKGモーニングにミニサラダ追加がおすすめ)
これは今回を合わせて合計3回の太平洋フェリーへの乗船を経て、私が出したベストプランである。ちなみに、このプランを実行したことはまだないので(オイ)、次回の乗船となる2度目の【きそ】において実践予定である。ただ、1日目の夜は持ち込んだ食料で宴会をするのがやはり楽しいと思う。食べきれなければ翌日に持ち越せば良いだけのことだし。そう、船の旅はまだ始まったばかりだ。
その他、太平洋フェリーの旅の最大の楽しみは朝昼晩いつでもビールを飲むことが合法的に許されていることである。日本という国の陸地を離れ洋上に出た瞬間、この法律が適用される。「風呂上がりの最高の一杯」が、大浴場とビール自販機によって、無限ループとなって船上の人々を祝福する。日々激務に追われるサラリーマンにとって、これほどの幸せは他に存在しないといっても過言ではない。こんな楽しい時間を過ごして、ついでに北海道まで連れて行ってくれるなんて、太平洋フェリーよ、ありがとう。
しかしながら、今回の私のフェリー旅では「勉強」を最大のテーマにしていたので、残念ながら断腸の思いで飲酒を禁じ手とした。少しでも飲んだら絶対にズルズルいってしまう自分の性格をわきまえていたので一滴も飲まないことを死守した。その代わりコーラをがぶ飲みしたので、たぶん血糖値は大変なことになっていたことだろう。
次回【きそ】乗船時には、結果はどうあれ試験をやりぬいた自分へのご褒美として、この贅沢をぜひ解禁したい。試験の出来は正直微妙なところなのだが……ががが。
下船
2泊3日にわたる贅沢な時間の終わりは、特等室の窓から見える景色に陸地が生まれ始めることで告げられる。
3日目の10時を過ぎたあたりから、船内は途端に慌ただしい活気を取り戻し始め、今までの時間が嘘だったかのように時の流れが速くなる。下船準備を促す館内放送が繰り返され、乗客が皆小綺麗な格好に様変わりして今までくつろいでいたロビーに姿を現し始める。
本当は、ここからが真の旅の始まりであるはずだ。フェリーが「移動手段」であるならば。
しかし、そこで確かに感じるのは——自分の中から溢れ出す感情の渦は、どちらかといえば”寂しさ”だ。フェリーからの下船は、胸躍る旅の始まりであるはずなのに、まるで日曜の夜に「ちびまる子ちゃん」を観ているときのような、休日の夜に似た寂しさをも湧き起こす、不思議な感覚になる。
この後は札幌に向かう。苫小牧フェリーターミナルから札幌駅への直通バスが出ているので、移動は容易だ。札幌で「サッポロ一番みそラーメン」ではないさっぽろラーメンを食べ、【JRタワー】で日本で一番爽快な用を足し、【さっぽろテレビ塔】でテレビ父さんと記念撮影をして、そして記念メダルを買う——それが目的であり、そのために北海道まで来た。それなのに、この胸をすくような寂しさは何なのか——
【太平洋フェリー】とは、それだけで一つの完結した”旅”なのだ。目的地へ向かう旅行者たちに、もう一つの旅をプレゼントしてくれる。普段のせわしない生活とは隔離された時間と空間は、それは文字通り”特別なひととき”であり、時には旅行以上に、日々の生活に疲れてしまった人たちの心を癒してくれる——旅の始まりであると同時に旅の終わりであるとは、つまりはそういうことなのだ。
このワクワクと寂しさとが入り混じった特別な感情は、【太平洋フェリー】で2泊3日を過ごした者にしかわからない特別な感情なのかもしれない。だからこそ、下船の時、スタッフのみなさんに、そしてここまで無事に運んでくれて、特別な時間を与えてくれた【いしかり】に、「ありがとう」を伝えたくなるのかもしれない。
ありがとう、いしかり——
その他、気になった諸々
記念メダルについて
一昔前は「フェリーといえば記念メダル」と言われるほど、フェリーと記念メダルとは強固な絆で結ばれていたらしい。実際、茶平工業公式HPのwebアーカイブにはかつての充実したフェリーメダルラインナップが残されている。フェリーには乗りたいが、メダルがないなら乗りたくないという複雑な乙女心を抱えるおっさんとしては、ぜひかつての栄光が戻って来てほしいと願ってやまない。
デザインとしては、船名が書かれている点が記念メダラー泣かせでもあり、喜ばしい点でもあるので、コレクター心理とは実に複雑である。当然ながら【きそ】【きたかみ】といった太平洋フェリー所有の残り2隻にも乗船してコンプリートしなければならないという使命感が生まれ、難易度を激増させている(※現在は近年新造船された【きたかみ】での販売はない)。
フェリーに乗ることは、日々仕事に追われるサラリーマンにとっては非常に大ごととなる。それは費用面の問題ではなく、日数面での問題である(むしろ費用は激安である)。「移動だけで2泊3日って……( ;∀;)」という話となる。また、太平洋フェリーの脆弱なWiFiではVPN接続なんてもってのほかって感じなので、リモートワーカーでもかなり厳しいことだろう。現代社会のワークスタイルをもってしても、作家などの「ワープロソフトだけで事足りるぜ〜」という自由業勢以外では船の上で仕事をすることは実に厳しい。船に乗ったら休みなさいという海の神様からのお告げである。
こういった事情のせいか、Twitter上でもフェリー関連のメダル情報がアップされることは非常に少ないことからも、記念メダラー達にとってフェリーメダルの存在が鬼門となっていることがうかがえる。三井商船フェリーの【さんふらわあ ふらの】【さっぽろ】なんて、メダルが発見された当時に有名記念メダラーさんたちがアップした情報以外にほとんどお目にかかれない。太平洋フェリーメダル完全制覇を成し遂げた人は、実はこの世界でごくわずかなことだろう(数名知っているが)。
しかしながら、「フェリー≒メダル」の文化を守るガーディアンとして、いつまでも、末長く販売し続けてほしい。【きたかみ】新造船であっさりとメダル販売をやめてしまったところに、一抹の不安があるよね…
(過去記事)船旅が最高なのではなく、太平洋フェリーが最高なのだ!
私がフェリーの旅にハマるきっかけとなった【太平洋フェリー「いしかり」】である。
【きそ】の項にも書いたが、太平洋フェリーは3隻のフェリーを所有しており、それぞれ記念メダルが販売されている(画像3枚目、4枚目のメダルはどのフェリーでも購入可能)。そのため、北海道1往復では全ての記念メダルをコンプリート出来ない。ただし、どのフェリーも不定期で遊覧航海のようなイベントをすることがあるので、そういった機会に手に入れるのも一つの手である。通常の手段で考えれば、名古屋←→苫小牧間を【いしかり】と【きそ】でうまいこと往復して両メダルを手に入れ、別の機会には仙台―苫小牧間を【きたかみ】で北海道に行き(あるいは帰りでも可)、函館―青森間を【津軽海峡フェリー】で帰る(あるいは行きでも可)というのが、無駄なく記念メダルを手に入れるコースとなるであろう。自力でのコンプリートを目指すなら、北海道には2度行かなければならないということになる。私はそのために、北海道は函館周辺の記念メダルはまだ収集していない(時間が足りなくて回り切れなかったのもあるが)。いつ再び北海道に行けるかは未定過ぎるのだが……
この船は私が思い描く「豪華客船」というイメージにぴったりの内容であった。無論、本当の豪華客船はこんなものではないのだろう。が、それでも十分、タイタニック的な雰囲気を満喫できた。まさに海に浮かぶホテルといったテイであった。エントランスからしてヘタなビジネスホテルよりかなり豪華なのである。
私の印象では、【きそ】よりもこの【いしかり】の方が豪華だった。もっとも、こちらは初めて乗ったので、そのインパクトが強かっただけかもしれないが。
なんにしても、もう一度乗ってみたいものである。LCC全盛のこの時代、似たような値段で2泊3日かけて北海道に行くというゆとりの権化のような旅をする時間の余裕がなかなか作れない、すっかりミドルとなった私。。。
(過去記事)記念メダルについて
上記でも触れたが、太平洋フェリー所有の3隻のフェリーではそれぞれ異なるメダルが販売されている。といっても、船名部分が違うだけで、フェリーの図柄は同一である。
こうした「一部の文字だけ異なるが、基本的な図柄は同じ」という記念メダルは実は結構存在する(プロ野球優勝メダルで年度だけ違うとか)。このことから、「金型の一部のみを変更して再利用する技術があるのではないか?」と予想している。なぜかといえば、金型代はかなり高いので、それぞれの金型を作るなら「どうせなら違うデザインにしたい」という人間心理が働くと考えるからである。裏を返せば、「一部のみの変更で再利用」は、費用が安く抑えられるという予想を立てている。
気になるなら自分が所有している金型でそのようなことが可能かどうか依頼してみればよいわけだが、腰が重いしお金はもちろん大事である。だれかこの謎を聞いてきてください(他力本願の極み)。
ちなみに今度「きたかみ」が新しく造船して全面リニューアルとなる。記念メダラーとしてはもちろん、記念メダルが新しく発売されるのか――ひいては、記念メダルの販売を継続してくれるのか気になるところなわけである。私、【きたかみ】メダル持ってないしね~。
独特なオブジェと、共用スペースのテレビ。静かなるチャンネル争いが水面化で繰り広げられる。船は水面上なのに(←もちろんうまいことを言ったつもり)。
×水面化
⚪︎水面下
せっかく上手いことを言ったのに誤字で台無しになっちゃってます!!!!!!
マジで感謝しかございません……恥ずかしー!