羅倶美偉~が日本で開催だ!
2019年9月20日、ラグビーワールドカップが日本で始まった。サッカーに比べるとどうしても華やかさが欠けるところは否めないが、最近ではすっかり普及した「軽自動車を白ナンバーに変える魔法のナンバー」は「ラグビーワールドカップナンバープレート」がその元祖であるし、日本ではまだサッカーも成しえていない偉業である。
現実問題、私の周辺でも正直そんなに盛り上がってないのだが、私はラグビーがまあまあ好きな方なので、実は待ちに待っていた。ラグビーワールドカップTシャツがもらえるマラソン大会にわざわざ出場するくらいには楽しみだったのである。
そんなわけで開幕戦から、ビール片手にテレビ観戦をした次第である。舘ひろし出るかな~と思ったら、やっぱり出たね! 昔ラグビーやってたという理由で出演するわりにそれほど興味がありそうにない舘ひろし。熱くなりすぎてないダンディズムな感じが良いんだけどね!
それにしても、リーチ・マイケルが私より年下だというのはどうにも解せん。あの貫禄は職場にいたら迷うことなく100%敬語で話すことだろう。
以下、日本戦及び印象に残った試合について圧倒的なまでの私見を述べる(しかもラグビー完全素人)。対戦する度に記事を更新していく予定。
9月20日 ○日本vsロシア×
試合開始早々に日本のミスから先制されるも、試合全般を通して格下感がある相手であったという印象である。もちろん結果論だが、終わってみれば初戦の相手としてはすげー丁度よいという絶妙感あふれる相手だった。弱すぎず、強すぎず。開催国特権か!?
日本はリザーブメンバー含め全員出場の上で、変な大差でもなく安定した試合運びで勝利し、好スタート過ぎるスタートを切った。
気になったのは試合よりもアナウンサーの実況で、解説者が「〇〇良いですね~」と言うと、興奮した声で「そうなんですか!?」と返していて、思わず、えっ!?となった。そこは素直に「そうですね!」で良いと思うのだが。さらにそれに続けて、「どういったところが良いのでしょうか?」とまるで論破するときのひろゆき(2ちゃんねる創始者)みたいに畳みかけてくるもんだから、解説者がなんか困っていた。そんなことが数回はあった。このアナウンサーは安易に同調しない芯の通った男なのかな?
ラグビーを観戦するのは好きなのだがズブの素人なので素朴な想いなのだが、「スクラム」ってものすごく特殊なことをしているように見える。誰がアレを最初にやろうと考え出したのかな? 「スクラムからリスタートしよう」というのはなかなか斬新な発想だと思うのである。
日本とロシアのスクラムは素人目には互角に見えたので特に派手なことが起こることもなくスクラムハーフがボールをパスしていたが、力の差がある相手だとスクラムで押されまくりどうにできないままジリジリと後退を余儀なくされるという姿が見られる。アイルランド戦とかそういうシーンが見られそうだよね~日本にとってピンチなわけだけど。
9月21日 ○ニュージーランドvs南アフリカ×
予選リーグで決勝戦やってる〜、という試合。すごい試合すぎて、日本がW杯を優勝する確率は地球に隕石が衝突する可能性よりも低いことがよく分かったというね……
南アフリカのタックルがやばすぎて、毎回交通事故レベルの衝撃を受けてるんじゃないかと心配になる。またボール持った奴が突っ込んでいってなかなか倒れずブルドーザーのように進む姿に、日本がやっている競技とは別物なんじゃないかという衝撃を受けた。日本だったらまったく止まらないんじゃないの? 前回大会、どうやって勝ったの日本?
しかし試合はオールブラックスことニュージーランドが勝利した。
派手なプレーではなく、堅実な技術が全て高レベルであったニュージーランドが南アフリカの猪突猛進をギリギリのところでいなしたという印象である。日本だったら手のひらの上でころころ転がされそう。
また、オールブラックスがいつも試合前に行う「ハカ」が、「カパ・オ・パンゴ」であったことも話題となった。「ハカ」には「カマテ」と「カパ・オ・パンゴ」の2種類があり、後者は特別な意味をもつ大事な試合でしか披露されない「ハカ」なのである。初戦からこれを披露したことから、オールブラックスのこの一戦にかける本気度がうかがえたのである。
9月22日 ○アイルランドvsスコットランド×
世界ランク1位のアイルランドの初戦。日本の同組である両者は共に日本より格上であり、ゆえにどのような試合になるか固唾をがぶ飲みして見守っていた日本国民達であった。恐らく良い試合になるだろうという予想のもと……
が。
結果としては、スコットランド(世界ランク7位)はなす術なくアイルランドに敗れてしまった。もう、何をやってもアイルランドの鉄壁の布陣を破ることができなかった。得点は前半の早い時間にペナルティキックで得た3点のみで、力では弾き返され、かといってトリックプレーを試みるもきちんと対応され、あと一歩のところまではゆくものの最後までトライは許されなかった。逆にアイルランドは4トライをし、ボーナスポイントもゲットした。
アイルランド、強すぎ。全員ジャイアンかよというパワーであった。
スコットランドも決して大崩れせず、最後までアイルランドに全力プレーを余儀なくさせた実力は本物であることは疑いようがない。率直な感想として「スコットランドだったからここまでやれた」という印象であり、「こんなやつらと日本はやるのか……」という絶望感が満載となった。
頑張ってスコットランドには下克上をしないと予選突破は難しいのだが、やべーという感想しかない。
9月28日 ○日本vsアイルランド×
日本強ぇぇぇぇぇぇぇ!
前回大会の南アフリカ戦と同じくらい長く語り継がれるであろう一戦となった世界ランク2位のアイルランド戦(いつのまにか順位が落ちていた)。嘘みたいな大金星で日本がグループ首位となる。サッカーではあり得ないほどの大金星で、なんならあわよくば優勝もできるんじゃないかという雰囲気すら醸し出している。選手も試合直後のヒーローインタビューで「準々決勝、準決勝……決勝も僕たちは狙っているんで!」といつの間にか夢が大きくなっていたのだが、見ている方も「だよね!」と真剣に頷いてしまうほどの大興奮である。
完全に素人目線の感想だが、南アフリカ戦の大金星と違って、「運が良かった」みたいな要素があまりないところも、日本の強さを感じさせるところであった。
試合開始直後はアイルランドの2連続「キックパス→トライ」の流れに「こんなんアメフトやん。格が違い過ぎる……(−_−;)」と観ていてしょんぼりしてしまったのだが、それ以降はアイルランドの攻撃を堅実な守りで粘り抜き、最後まで行かせない力強さに満ちていた。何回突っ込まれても守り抜く、まさに「粘り勝ち」という守備であった。
日本は相手のミスから得たペナルティーキックを積み重ねて少しずつ差を縮めていく弱者のラグビーであったが、「やれることを積み重ねていく」といった姿に、日本人の堅実さを見た気がした。日本代表に外国人多いけど。
そんな中、まるで満を持していたかのような福岡の逆転トライで、盛り上がりは最高潮になる。ここまでのアイルランドの幾度かの攻撃を押し留めてきた姿も含めて、「これ、マジで勝てるんじゃね?」と日本中が思い始めた瞬間である。
この時には、素人目には完全に日本が試合を支配しているように見えた。信じられない光景であった。
最後の最後にも福岡がインターセプトから独走してトライ寸前まで猛ダッシュしたが、最後には追いついて飛びかかったアイルランド代表にはマジでビビった。みんな巨漢なのに足早過ぎである。
この後の攻防で日本は時間をうまく使いながら最後のトライを試みるもアイルランドに防がれ、「7点差以内の負けでボーナスポイント1点」を取りに行ったアイルランドがボールを蹴り出し、ノーサイドとなった。結果的には、最後の福岡の猛ダッシュを止めてトライを許さなかったことを「勝ち点1という意味」に繋げたアイルランドはさすがである。
「相手の方が確実に強いけれど、練習してきた成果を出しきって勝つ」という勝利の形が、私は大好きである。強くなればなるほど、「独自の形」というものが完成していき、どんな相手にも自分たちの形で勝利するのが王者の姿勢である。サッカーでいえばバルサは「バルサのサッカー」をしてどこが相手でも勝つわけである。
私はそういう格上に対して、「自分たちの理想を押し殺してでも、徹底した規律と作戦で勝つ」という弱者のサッカーが好きなのである。サッカーではないが、ラグビー日本代表のこの試合は、そういったラグビーだったのではないだろうか。自分たちの理想を追求するよりも、勝つために練習で築き上げてきた成果をいかんなく発揮して実力差を埋めた末の勝利であるように映った。作戦がツボにはまって勝つ試合ほど面白いものはない。興奮して眠れないぜ!
ただ前回の大金星との最大の違いは、試合のフィニッシュが「トライで締めくくる」ではない点である。この点、前回の方が振り返り映像にどうしても華があるので、長く使われるのはやはりあの南アフリカ戦の決勝トライのシーンであろうと個人的には予想する。どうかね〜
9月29日 ×オーストラリアvsウェールズ○
前半を観た限りではこのままウェールズが磐石の態勢で勝つかな〜と観るのをやめようと思ったくらいであったが、後半は完全にオーストラリアが試合を支配し、あれよあれよと1点差まで迫った。しかしあと一歩が遠く、最終的にはウェールズが勝利した。
強豪国同士の戦いはまじおもしれー、ラグビーワールドカップまじおもしれー、と酒が進んだ。
9月30日 ×サモアvsスコットランド○
同じ予選プールで、日本がまだ対戦していない両者の一戦。そのため日本でも注目度の高い試合であったが、結果としてはサモアが0点で終わり、スコットランド相手になす術がなかった印象である。スコットランドもアイルランド戦で何もできなかったところから見事に立て直したという印象。
この試合の特筆すべき点は、とにかくボールがよく滑ったというところである。まじで体育の授業でのラグビーかと思うくらい、両者ともポロポロとボールをよく落とした。なんか高温多湿だったことが原因で手汗やら湿気やらがそうさせたらしいのだが、文字通り水を差された一戦であったといえる。うまいこと言おうとして失敗した例。
10月5日 ○日本vsサモア×
世界ランク2位のアイルランドにも勝った今の日本の勢いから、「まあ勝てるんじゃね?」という雰囲気が日本中に充満していた一戦。戦う選手たちはそういった雰囲気が何よりも怖いだろうし、前回大会は南アフリカに勝利した後のスコットランド戦で大敗してしまったこともあり、やりづらかったのではないかと考える。とか言いながら私も「まあ勝てるんじゃね?」と思っていた平凡な日本人なのだが。
で。
予想通り快勝した。80分過ぎのラストワンプレーで4トライ目を決め、ボーナスポイントすら獲得してしまうほどの快勝であった。日本中が調子に乗っちゃうパータンだね!
素人が観てても主将のリーチ・マイケルがピンチになりそうなところで必ず良い仕事をしていたのがわかって、「コイツまじで年下とは思えん……(・ω・) 」と日々後輩からの信頼を失い続けている社畜としては、人間的な器の違いに愕然とした次第である。普段の業務は流すようにこなせるけれども、ピンチのときこそ役に立たない男——そう、私です。
この勝利で予選プール1位通過が見えてきたわけだが、1位でも決勝トーナメントの相手は南アフリカで、2位だとニュージーランドって、なんか詰んでる感あるんだけど、やはり南アフリカの方がマシだろうからぜひ次戦のスコットランド戦も頑張っていただきたい。「ニュージーランドvs南アフリカ」戦を観たときは「こんなやつらとやったら日本死ぬんじゃないか……」とマジで思ったが、今では「オールブラックスに勝つ日本が観てみたい!」なんて考えちゃっている私は、きっと典型的なラグビー素人日本人であることだろう。よくわかってないと、夢ってでっかくなるよね!
それにしても、サモアの四番がプレデターに見えてしょうがなかった。が、よく観たら日本にも堀江というプレデターがいた——というどうでも良い話ね、これ。いや、髪型が。ゴツ目のプレデター。
10月13日 ○日本vsスコットランド×
。・゜・(ノД`)・゜・。
涙
言葉にならない。
固唾をガブ飲みとはこのことである。
「油断しちゃダメ」と言い聞かせながらも内心「余裕じゃね?」と思わせた前半、福岡堅樹の個人技からのカウンターで突き放すトライで一層漂う楽勝ムードの後半の前半——からの、地獄のような後半残り20分。
スコットランドの猛攻にさらされ、なす術なく2トライを奪われる。日本が攻撃に転じた時間帯もあったものの、スコットランドの鋼鉄のディフェンスにどんなに攻めても突破が許されず、はっきり言って終盤の日本はどうすることもできずに追い詰められていたと思う。そして、いつの間にか「引き分けでも日本は決勝トーナメント進出が可能」という事実はどこかに吹っ飛び、「1トライでも奪われればもう負け」みたいな重圧が確かにあった。それくらいスコットランドの猛攻は鬼気迫るものがあり、試合も熱くなって選手間のいざこざも頻発し、荒れた。
最後の自陣5メートルからの相手ボールでのスクラムのときは、今のスコットランドの猛攻を考えると、正直「殺られる!」と誰もが覚悟したのではないだろうか。
が。
最後の最後に、終盤に何度も何度もスコットランドにやられたターンオーバーをやり返した起死回生の日本のターンオーバー。そこからの時計の針の進み具合の遅さは日本最遅であったと思われる。「なかなか終わらーん!」と身悶えたのは私だけではないだろう。
最後、日本がボールを蹴りだしてノーサイド。はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っとどっとイスになだれ込んだ日本中(推測)。
こんな試合を毎回していたら、日本代表そのうち死んじゃうんじゃね?
「激闘」とか「死闘」とかいった言葉が飛び交っているが、そんな言葉達ですら生ぬるいのではないかと感じられるくらいの試合であった。この試合を観たら、誰もがもうラグビー日本代表ファンである。桜のユニフォームが超欲しくなっている超ミーハーな私。
日本中がラグビーの虜となった秋の日の夜。
10月19日 ○ニュージーランドVSアイルランド×
決勝トーナメント1回戦。
W杯3連覇中のニュージーランドと、大会前世界ランキング1位だったアイルランドの「王者対決!」みたいなワクワクする対戦だったものの、終わってみればアイルランドが為す術なく敗れ去ったという印象。アイルランドも意地の2トライを挙げたが、初めてトライしたときにはもう試合は決まっていて「せめてもの意地」感が溢れかえる悲しいトライであった。
直近の対決ではアイルランドが2連勝中とのことだったが、「このニュージーランドにどうやって勝ったの?」というくらい、ニュージーランドが強すぎた。いや、マジで。
印象としては「攻撃が止まらない」といった感じである。鉄壁のディフェンスを誇るというアイルランド(よく知らんけど)を常に攻め立て、しかも超早いもんであれよあれよという間に押し込まれ、ほんと為す術なくトライを重ねられていったという印象である。ずーっと連打を浴び続け当然のようにダウンするという正攻法にやられたアイルランドは、最終的にはベンチメンバーだけでなくピッチに立つ者たちも絶望的な顔をしていた。
こんなチームにどこが勝てるんだ? 黒い集団にトラウマを植え付けられた者多数。
10月20日 ×日本VS南アフリカ○
サクラが散った……
(´;Д;`)
日本史上初の決勝トーナメント1回戦。対戦相手が4年前の勝利で日本ラグビーが躍進するキッカケとなった相手である南アフリカだけに、今思えば異様なまでに日本中の期待が高まっていた。つまり「南アフリカなら勝てるんじゃね?」と。
しかし、現実の壁は厚く高く堅く、為す術なく敗れ去ったという印象である。前半こそ3−5と健闘したスコアではあったが、試合内容的には南アフリカのディフェンスを突破できずに苦しみ続けていた。スコア的には接戦だったのも相手のペナルティに異様なまでに助けられていた結果であり、ボール支配率で上回っているのに何故か追い詰められているというラグビーの不思議が画面上には延々と映し出されていた。
前半をなんとか凌ぎ切った日本だったが、後半は南アフリカの圧倒的なまでのパワーに為す術なくトライを許していく。特にモールが全然止まらず面白いように押し込まれてからのトライには、文字通り「力の差」を見た。また、マイボールラインアウトをことごとくスチールされるなど、パワー勝負以外でも日本の頑張りどころをいろいろと潰され、格上の強さを見せつけられた形となった。
全てを出し切った日本であったが、それを全て跳ね返してきた南アフリカが強かった——そんな印象である。
典型的なにわかファンである私は、典型的なにわかファンが皆思っているであろう「感動をありがとう」という気持ちで溢れかえっているなうである。日本中に「ラグビーがこんなに面白いなんて〜」と思わせた歴代最強の日本代表は、W杯日本開催という重責を見事に果たしたといえるだろう。早々に負けていたら、「決勝戦が観たい!」なんて気持ち、芽生えなかっただろうし。しばらくはラグビーワールドカップの希望ナンバーが街に溢れそうだぜ……。なんならオリピックナンバーじゃなくてそっちにしとけば良かった! とあっさり影響されるミーハーな私。
10月26日 ○イングランドVSニュージーランド×
準決勝第1試合。
この試合のハイライトは、試合開始前であると断言する。
ニュージーランドの勝負のハカ「カパオパンゴ」に対して、イングランドはそれを取り囲むような「<」の字型の陣形でドンと迎え撃った。他の国は大抵横一列に並びチームメイトと肩を組んで「心を一つに」的な形で受け止めるのだが、この時のイングランドは全員が仁王立ちで腕を組み、全身で真正面からハカの威圧を受けて立っていた。「<」の字の真ん中に立つキャプテン?なんて「不敵な笑み」という言葉がぴったりの表情でじっと見つめていて
マンガやん
と鳥肌モノであった。
もちろん100パーセント結果論なのだが、もうこの瞬間に勝負は決まっていたのではないかと思うのである。テレビの画面を通して観る限り、ニュージーランドのいつもの迫力は、完全に打ち消されていた。
うまく言えないのだが、どの国もニュージーランドのハカを見るときは「心を一つにして王者に挑む」みたいな雰囲気で肩を組んでいるように見え、それは言い換えればあくまで「挑戦者」の立場なのである。しかし、今日のイングランドの立ち振る舞いは、どちらが王者なのかわからないほどの存在感であった。「威風堂々」という言葉がぴったりの貫禄で、相手の「威嚇」を全て正面から受け止めたように見えた。
からの〜試合展開が、まさにそのまんまな内容であったので、振り返るとなおさらそう思うのである。イングランドは、ニュージーランドに何もさせなかった。1トライを奪われるも、それはびっくりするほどの完全なる自分たちのミスでやられた失点であり、それをきっかけに崩れることもなく、他の場面はニュージーランドを全ての面で上回っていた(ように素人目には見えた)。
前日本代表HCでもあるイングランド代表エディ・ジョーンズHCのサクセスストーリーが面白いように展開されている。過去W杯で1勝しかしたことがなかったような弱小国代表であった日本を強豪国と渡り合えるくらいにまで成長させ、満を持して強豪国のHCになったら、W杯優勝をもぎ取りそうな勢いである(しかも「自分が来るまでは落ち目の強豪国だった」という点がまたマンガっぽい!)。もしも優勝したら、日本の小学校の図書室に並べられているような伝記マンガが出版されそうである。
記念メダル的な話でいえば、イングランドが優勝したら、日本にゆかりのあるHCということもあって、なんか優勝記念メダルが発売されそうな気がしなくもないようなことを思わなくもない。
10月27日 ×ウェールズVS南アフリカ○
準決勝第2試合。
準々決勝で日本を下した南アフリカになんとなく肩入れしがちな日本人であることよ。ただ「優勝したことがないところに頑張って欲しい」というこれまた日本人特有の「判官贔屓」も発動され、どうにもふわふわした気持ちで観戦してしまった。
試合は面白いほどまでに「互角」であった。トライ数は同じで、結局ペナリティキックを決めた回数で勝負が決まった——つまりペナルティを犯した数が少ない方が勝ったということになる。
そのペナルティの明暗を分けたのは、スクラムであったように思う。ウェールズは南アフリカのスクラムを最後まで止められず、よくしらんけど「故意にスクラムを回転させた」というペナルティを数回重ねた結果、敗北したように見えた。
かといってウェールズが押されていたわけでは決してなく、他の面では優勢に進めている場面も多かった。ただ南アフリカのディフェンスも感動的なまでに頑張っていて、南アフリカ陣地の残り5メートルラインでの攻防は息つまるものがあった。愚直なまでに何度もパワーでの単純な突破を図るウェールズに対して、ペナルティを犯さず何度でも防いだ南アフリカの姿には「すげーな」と思った(小並感)。
ぶつかり合い——というラグビーにふさわしい一言がぴったりの一戦であった。
11月1日 ○ニュージーランドVSウェールズ×
3位決定戦。
まさかの地上波での放送がないという……。まあなんとかして観ましたが(奥歯に物が詰まったような言い方)。
3位決定戦は、モチベーションの維持が難しいとされている。サッカーのワールドカップでもその存在意義には賛否両論がある。無論、初出場やら奇跡のような準決勝進出を演じたチーム、数十年単位で低迷が続いたチームにとってはその価値は疑うまでもないが、準決勝にまで勝ち進んできたチームというのは大抵は「優勝候補」と目されているようなチームなので、そのような強豪達が「目標を達せられなかった」という点での喪失感の中で戦わなければならないことや、さらには「もし負けたら、ここまで勝ち進んできたにも関わらず二度負けることになる」というある種の特殊な状況にさらされることになることから、近年では「準決で負けたチームは両方3位」とする大会や競技もある。
が、【ラグビーワールドカップ】はそうではないので、ある意味無慈悲にも3位決定戦は行われた。3位決定戦の立ち位置の難しさを証明しているかのように、ニュージーランドは伝統の「ハカ」を、勝負の「カパオパンゴ」ではなく通常の「カマテ」で行った。なんだかなーではあるが、気持ちもまたわかるのであった。
試合はニュージーランドがウェールズを圧倒して終わった、という印象である。ウェールズは1トライを挙げたものの、見所はそれだけであった。あとはオールブラックスがやりたい放題やって、綺麗に最後を締めたという感じ。
地上波で放送しなかったことや、勝利チームの選手たちのいまいちな喜び方、会場のなんだかすっきりとしない盛り上がり方など、「3位決定戦とはなんなのか」ということをよく表した試合であったといえる。
11月2日 ○南アフリカVSイングランド×
運命の決勝戦!
正直誰もが「イングランド優勝」と予想していたと思われる。これは何も感情論ではなく、理屈である。決勝戦に至るまでの試合結果が「南アフリカ<ニュージーランド」「ニュージーランド<イングランド」ならば、「南アフリカ<イングランド」という帰結となるのが文科省が進めるプログラミング教育によって身につけさせたい「論理的思考」というやつである。
しかしながらラグビーは、理屈を超えた先に存在するものであるらしい。
試合は、前半がもはや恐ろしいくらいの戦いであった。「死ぬんじゃね?( ゚д゚)アングリ」というぶつかり合いに、誰もが息を飲んだ。事実、早い時間帯から怪我人が続出し、屈強な男たちが悶絶する姿に「多重交通事故」という言葉が脳裏に浮かんだ。時間はあっという間に過ぎていった。
バチバチのぶつかり合いとシーソーゲームの得点の入り方に互角のように見えた序盤の戦いであったが、南アフリカがスクラムで完全にイニシアチブを握ると、イングランドはそれ以降ちょっと為す術がないように後手に回っていた印象である。南アフリカは、
キックで敵陣でプレーする→相手の軽い反則を誘う(ノックオンとか)→スクラムを制する→相手がたまらずペナルティを犯す→ペナルティキックで3点
というパターンが完全に出来上がり、シーソーゲームだった得点が、徐々に離れていった。得点が離れていくので、イングランドは序盤のような手堅い試合展開から勝負に出ざるを得なくなり、その隙を突かれる形で南アフリカにトライを許した。それで実質試合は終わったようなものであった。
終わってみたら、決勝は(も?)南アフリカのスクラム・ハーフ「デフラーク」の大活躍であった。攻撃でもディフェンスでもどこにでも現れるし、周囲の状況を把握しピンチを未然に防ぐような動きをしていることが素人目にもよくわかる、超いい選手であった。スクラムのときには何かとボールをクルクル回す芸も披露して、キャラも非常に立っていた(ただ決勝ではまったくやらなかったところが「本気度」を表しているようであった)。顔もイケメンで、お前何やねんというくらいの完璧度である。
試合後の表彰式では、イングランドの選手が銀メダルの授与を拒否ったりすぐに首から外したりしたことが問題となった。私個人としては良いとも悪いとも思わなかったのだが、観た瞬間に「ああ、これはまた問題になりそうだな」と思った。そして案の定、ネット上では非難轟々で、携わるスポーツがまったく違って本来ならば門外漢であるはずの川淵三郎まで出てきて「日本の子供たちには真似して欲しくない」というコメントを残した。いや、お前はまず我那覇にちゃんと謝れよと、それこそ自分のことを棚に上げる姿は日本の子供たちに真似して欲しくないと思いつつ。
優勝しか狙っていなくて、その夢がまであと一歩のところで阻まれた(しかも大半の選手にとっては一生に一度のチャンスであった)ことを考えれば、人間なのだからちょっと不貞腐れちゃうのも心情としては理解できるところである。しかし現在は個人がメディアもつ「ネット社会」であるので、公の場に立つ人間は、この「ちょっと」も許されなくなりつつある。誰かがそれを許容しても、他の誰かがそれを許容できずにネットの海に目の前で起こった出来事を解き放つ。それは大きなうねりとなってその震源にまで届くこととなり、場合によっては震源をも飲み込んでしまう。
最後に少し残念なことになってしまったが、私個人としては、どうかここでおさまって欲しいと願ってやまない。というか、少なくても川淵三郎には言われたくない、というしつこい話。(何のことかわからない人はこの本をぜひ読みましょう)。
大会を終えて(超素人による勝手な総括)
準々決勝で日本に勝った南アフリカが優勝したということで、日本人としては「まあ優勝国に負けたんならしょうがいない」感に包み込まれ、なんとも平和に終わった感じである。その点も含めて(実はとても大きい)、ラグビーワールドカップ日本開催は大成功だったのではないだろうか。出来過ぎている感すらある。
そして、ラグビーがまさか日本でこんなに盛り上がるとはテレビ局含め誰も思っていなかったと思うのである(地上波放映少なすぎでしょ)。それは良い見方をすれば、イコール「ラグビーがこんなに面白いなんて!」という発見でもある。
これをきっかけにラグビートップリーグを観るようになる人というのはどちらかというと少ないと思うのだが(サッカーだってJリーグの放映を観ている人は代表戦だけを観る人に比べたら圧倒的に少ないはず)、スポーツニュースや雑誌の特集などで注目されることは、4年前の「奇跡」のときよりもさらに増えるのではないだろうか。この大会は、日本にそれぐらいのインパクトを与えた大会となったと思うのである。
というか、4年前に「日本が南アフリカに勝つという奇跡」を成し遂げたからこそ、今回の日本開催のワールドカップがそれこそ奇跡のように盛り上がったのは間違いない。10年前に日本開催が決まり、4年前にその基礎・地盤が作り上げられ、満を持してこの大会で結果を残した。マンガみたいな話である。プロジェクトXである。
この2ヶ月弱、本当に楽しかった。サッカーのワールドカップでもこんなに熱心に観戦しなかった。そんな私は典型的な「にわか」というやつである(流行語大賞獲りそう)。
スマローさん、初めまして。大阪に住む、通りすがりの者です。
いつも楽しく、貴ブログを拝見させていただいています。
私もメダルコレクターの端くれですが、令和になってからの購入はまだ0。
これではイカン、ということで、以前に記事にされていた東大寺の大仏殿に行ってまいりました。もちろん目的は「銅メダル」です。
数年振りの東大寺は外国からの観光客で超満員。(数年前に行ったのも、金銀メダルのため)販売機の電源が入るのが9時30分からとのことで、待つこと1時間。(早くに行きすぎ)
シートが外され、自販機に電源が入ると・・・
記事でご紹介されていた「銅」の他に、何と「黒メダル」の存在が。
スターウォーズ展で販売された、ダース・ベイダーと同じ風合いです。また「黒」は大仏さんのメダルのみで、大仏殿は従来のままで追加はありませんでした。
我々にとっては種類が増えて嬉しい出来事なのか、はたまた遠方のコレクターの方々にとっては「買いに行かねば」と言った、意味が有るような、無いような、複雑な心境になる出来事なのか。
以上、ご報告させていただきます。これからも楽しい記事を楽しみにしています。
コメントありがとうございます(^ ^)
東大寺の大仏黒ニッケルメダルは、どうやら私が銅メダルを購入しに訪れた2日後に販売が開始されたようで、新しいメダルが誕生した嬉しさよりも、絶望感が二百倍くらい優っております。これが「半年後」などであったらここまでの悲しさはないのに……と思うと、人間の心の不思議さを神秘的なまでに感じずにはいられません。
黒メダルは貴重なのでぜひ欲しいのですが、私もメダルのためだけに二度も訪れた場所なのでなかなか足が向きません。奈良はついでに寄れるような場所もあまりなく、訪れるにはハードルが高いのですが、いずれ手に入れたいものです( ´∀`) 羨ましいです〜
ありがとうございました!