邪道【日本武道館】 記念メダル

38ミリメダル(デカメダル)

 

↓新旧記念メダル比較(現行メダル31ミリ)

 

 日本武道館記念メダルの新旧を比較すると、非常に大きさ以外はほぼ一緒である。メダルがもつ質感や雰囲気もほぼ一緒なので、現行メダルは「ただ小さくしただけ」といった感じか?刻印の「昭和47年」は私が生まれる前であるので、ずいぶん長いこと記念メダルが販売されていることになる。こういった物が簡単に入手できるようになった点は、ネット販売の恩恵であると言える。

 かつて一世を風靡した『けいおん!』というマンガ・アニメがある。

 

 

内容を簡単に言えば、目の大きい女子高生たちが軽音楽部でガールズバンドを組んで武道館でのライブを目指すという萌え萌えなマンガ・アニメである。その中で最終回での有名な台詞に「ここが私たちにとっての武道館です」というものがある。学校の文化祭でのライブで主人公の女の子が言う台詞で、実は私はこの『けいおん!』を全く観たことも読んだこともないのだが、知っている。それくらい有名なセリフである(世界規模で考えれば知らない人の方が圧倒的に多いだろうが)。

 観たことも読んだこともないので、詳しい内容も知らないし、このセリフの背景にある主人公の深い思いというものもわからない。有名アニメといえど、日本に住む大半の大人は、このセリフを知らないだろう。そんな人間がこのセリフを聞いたときどういうことを感じるのか――ということを目の当たりにしたことがある。

 私の前職の同僚に、半分職業としてサッカーのコーチをしている人がいたのだが、コーチをしているクラブの子が「サッカーをやめて、バンドをやりたい。音楽の才能があるって知り合いに言われた」と言って来たときのことである。その同僚としては、その子にサッカーのセンスをそれなりに感じていただけに、どこぞの誰かもわからない人間に余計なことを言われて「サッカーを辞める」という選択肢を与えたことに憤りを覚えたのだろう。「どんな人なんだ?」という質問に「プロではないけれど、ライブ活動をしている。その人に武道館を目指せると言われた」と答えたそうで、「その人は武道館でライブをしたことがあるのか?」と訊くと、「武道館でライブをしたことはない。でも、自分がライブをする場所が、自分にとっての武道館だと言っていた」と目をキラキラさせながら言っていた。それを聞いた元同僚は「それは武道館でライブをやった人に失礼だわ!」とキレていた。それを聞いた私は「確かに!」と目から鱗であった。

 その元同僚はバリバリの体育会系で、『けいおん!』というマンガ・アニメのことなど知る由もない。だから、その子が言ったセリフが恐らく『けいおん!』から来ているものであること、あるいはその知り合いとやらが本当にいてその知り合いが『けいおん!』の影響を絶大に受けているのかはわからないがとにかく『けいおん!』の主人公が最終回で感動の涙を誘うセリフとして発したものであることは知る由もなく、このセリフを聞いて率直に、素直に失礼だと思ったのだろう。

 私はこの出来事に接するまでは、「ここが私にとっての武道館」というセリフにさしたる疑問を抱いたことはなかった。確かに感動を呼びそうなセリフだな、という程度しか思っていなかった。

 だがよく考えてみれば、非常に冷たいことをいえば、「自分の目標を達成できなかったに対して調子のよいことを言っているだけ」とも受け取れる。というか、もはやそうとしか思えなくなってしまった次第である。「〇〇という夢はかなわなかったけれど、これが私にとっての〇〇です」という言葉が微妙に流行しているが、これは自分とって非常に都合の良い解釈をしているだけだとも言える。これを「適応機制」という人間の自己防衛能力の中で「合理化」と呼ぶ。詳しくは高校の保健体育で学習するはずである。

 いや、もちろん物語の背景を知っていればもっと重みのある言葉として胸に響くのだろう。が、それなくしてそのセリフだけをいただいてしまってはいけないということである。「武道館でライブをした人に失礼」なのである。

 「日本武道館」という名称を聞くと、私は必ずこのエピソードを思い出すのであった。




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