邪道【横浜国際競技場】 記念メダル

 【横浜国際競技場】は、現「日産スタジアム」のことである。といってもこの名がなくなったわけではなく、正式名称は【横浜国際競技場】のままである。いわゆるネーミングライツ(命名権)という金の話である。ネーミングライツを最初に考え出した人は非常に頭が良いと思う。年間億単位の赤字を計上する市財政のお荷物であったこうした運動施設に対して、基本的には何も必要とせず利益を補填する仕組みとして考え出されたこの制度は、今ではやらなきゃ損くらいの勢いで広く浸透した。愛知県にある「一宮総合体育館」なんて、3つあるアリーナに別々にネーミングライツを設定して収入源を3倍にするというウルトラCをやってのけている(ちなみにメインアリーナが「DIADORAアリーナ」、サブアリーナ二つがそれぞれ「いちい信金アリーナA」「いちい信金アリーナB」である。いちい信用金庫の大盤振る舞い)。ちなみにこの体育館と大きな意味では同じ敷地内に、完走までに12ヶ月間を要するスタンプラリーメダルがあることで有名な【138タワーパーク】がある。

 これはネーミングライツを批判する内容では全然なく、むしろもっと積極的にやるべきだと訴える話である。こうした行政の施設(【横浜国際競技場】は横浜市所有)は大抵利益を生み出せずに維持費だけで赤字となる施設と成り下がるのだが、いわばニックネーム権を貸し出すだけでその赤字をある程度補填できるのである。まあ「日産スタジアム」という呼称に関しては、現在では初期の契約時より半額になってしまったが(日産側に「高くて契約更新できない」と言われたので他に公募をかけたが借り手は現れず、半額にして再公募したら日産が応募してきたというオチ)。

 利用者の目線からいえば、例えば先に出た「DIADORAアリーナ」で言えば、私はフットサルプレーヤーなので、サッカー用品でわりと大手の「DIADORA」の名を冠している場所でフットサルをするというだけで、妙にテンションが上がる。行ってみるとほんと普通の体育館なのだが(かなり広くて綺麗だけど)、「今日はDIADORAアリーナで試合ね」と言われると、フットサルの聖地でプレーする感が生まれる不思議。実際、この「DIADORAアリーナ」ではほぼフットサルの利用しか見たことがない(休日昼間は近隣の学校部活動の市民大会が開催されているみたいだが)。

 つまり、ネーミングライツの契約先によっては、思わぬ神格化が生まれることもあるのである。需要(想定される施設利用者)とマッチすれば、契約料以上の効果が生まれる可能性がある。ただこのマッチングがこれほどぴったりとハマった例はどちらかというと少ないかもしれない。

 また、ネーミングライツは文字通り「名」はあるものの実態はない非常に曖昧な「商品」であるので、ほどよい価格設定というのが難しい。【横浜国際競技場】の例では、言ってみれば日産の思惑通り当初の半額(年1億5000万円)で再契約できたわけで、横浜市からしたら一度は年3億円で契約できていただけに苦渋を舐めさせられた思いであることだろう。しかしながら、ではそもそも年3億円という価格が果たして適正だったのかどうかという問題がある。適正かつ合理的判断による価格であるとしたら、日産が再契約を蹴って他に公募をかけた時点で、どこかから応募があったはずであるわけで、それが一社もなかったというのは、普通に考えれば「高すぎ」ということでしかない。それを半額の1億5000万円にしても結局「日産」一社の応募のみというのは、年1億5000万円でも高いということを意味している(ま、いろいろあるのかもしれませんがね〜このあたりは)。

 このように考えると、一地方の一体育館におけるネーミングライツの価格がいくらが適当であるのかを考えるのは、かなり難しい。応募する企業側もネーミングライツにかける宣伝広告費から生まれる費用対効果は実に計りにくいので、「地域貢献」的な側面が強くなる可能性は否めない。「地域貢献」に、多額の費用を期待するのは難しい。行政側も、CSR的な側面に訴えて契約を勝ち取る手法になるのではなかろうか。

 日産も、横浜F・マリノスの存在があるからこそのネーミングライツ契約であろう。【横浜国際競技場】が「日産スタジアム」と呼称されることで生まれる利益がそこまで大きいとは思えない。

 ただ、行政側は価格をかなり下げてでも行う利点はあると思うのである。なんといっても、元手が掛からないのだから。最低でも、契約時に掲げる企業の看板やら広告やらを補う費用さえ稼げれば損はしない訳である(人件費を加味すればそれだけではないだろうが、その辺は行政ということで←謎)。

 最近では名古屋市が「歩道橋にネーミングライツ」を募集したことで話題となった。名古屋市のやり方は「歩道橋への表示とその消去はすべて契約企業の負担」という一円も損をしないものであった。まったく損をしないやり方でありながらまことに堂々としたやらせてあげる感の溢れる募集要項には、一周回って神々しさすらある。さすが政令指定都市の行政である。天晴れ。

 このような形もあるわけなので、市町村行政管轄の体育館等も、募集するだけしてみたらと思うのだがいかがなものか。応募がなければやらないだけなのだから。

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